『ウォンテッド』75点(100点満点中)
Wanted 2008年9月20日、日劇1ほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/110分/協力:NTT DOCOMO,INC. ジェネオン エンタテインメント 配給:東宝東和
監督:ティムール・ベクマンベトフ 原作:マーク・ミラー「WANTED」 出演:モーガン・フリーマン、アンジェリーナ・ジョリー、デビッド・オハラ

アンジェリーナ・ジョリーがアクロバティックな殺し屋に

転職というと響きはいいが、日本の場合は転がり落ちるような職業変更ばかりというのが実情である。新卒以外でまともな職場に就けると思うなと、小学校から教えるべきと私は考えているが、教師の多くは「何度でもやり直せばいいのよ」などと、罠としか思えぬ無責任発言をすり込むからたちが悪い。

さえない青年ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、ある日激しい銃撃戦に巻き込まれる。彼を守るかのように現れた美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)は、ウェスリーの父は凄腕の暗殺者だったと語り、フラタニティなる組織のアジトに案内する。彼らは神話の時代から神に代わって密かに悪人を抹殺してきた歴史ある組織で、ウェスリーの特殊能力を覚醒させようとしているのだった。

転職先を間違うと大変なことになるという、貴重な教訓を得られるアクション映画。主人公のヘタレ男は、絶世の美女アンジェリーナさんに乗せられて、よりにもよって暗殺者にジョブチェンジしてしまう。そこから先は聞くも涙の物語。常識外れのとんでもない訓練をやらされ、銃弾を意識的にカーブさせるなど、一人前の暗殺者に必要なスキルを身につけさせられる。そんなスキル一生身につかねえよと言いたくなるがそこはそれ。OJTの様子は特に必見だ。

このマンガ的アイデアの数々を見ているだけでも楽しい。ロシアで大ヒットした『ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR』(04年)でその才能を認められたティムール・ベクマンベトフ監督による奇抜な実写世界は、得意のデジタル処理を駆使した見応え十分なもの。発射された銃弾をドアップかつスローモーションで着弾まで追いかけるといった、通常ではあり得ない速度域の映像を堪能できる。

車をまるで自転車のように自在にスピン、ジャンプさせるチェイスシーンも、作り手の想像力の豊かさに感心してしまう出来ばえ。跳ぶわはねるわの変幻自在なドライビングテクニックに、観客は「ありえねー」と爆笑&大興奮だ。

私が気に入ったのは、この老舗暗殺商店の社員たちが、トレーニング後に疲れを癒す風呂の存在。ここのトレーニングは実践重視なので、たとえばナイフ格闘の授業なんかだと教官が平気でこちらを刺してくる。当然新人は傷だらけ、というか死亡寸前の大けがをするわけだが、この風呂に入ると奇麗さっぱり傷が治るのである。まさに現代医学を超えたベホマ風呂。おまけに混浴なので、たまに同僚アンジェリーナ・ジョリーのおしりの割れ目などを拝むことも出来る。職場は違えど、思わず仕事帰りに寄りたくなってしまう魅力に満ちている。

そのアンジェリーナ・ジョリーにとって、本作はキャリア最高のオープニング興行成績を記録した。ブラッド・ピットとの結婚(※事実婚)以来、なにをやっても絶好調の彼女は、"もっともパワフルな女優"という、よくわからない肩書きでギネスにも載っている。CGで修正してるのかと思うほど怖い、銃をぶっ放す際の怒りの形相を見ると、何となくそれも頷ける。

この映画はR-15指定で、イギリスでは暴力的なポスターにクレームがついたそうだが、普通の大人はむしろ笑いながらみるタイプの作品だ。どうも何かがズレており、そのズレを楽しむという感じ。ネタバレになるので言えないが、後半の真相解明周辺などは突っ込みどころ満載である。苦笑しながら楽しむ、成熟したカップル向けのトンデモ映画といったところだろう。

アンジェリーナ・ジョリー 彼女のカルテ (P-Vine BOOks)
リンク先の内容紹介を読むだけでも凄い。
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いや、無理だって。


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