『大決戦!超ウルトラ8兄弟』80点(100点満点中)
2008年9月13日、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー 2008年/日本/カラー/97分/配給:松竹
昭和ウルトラマンと平成三部作の世界観が融合
ウルトラマンで育った世代は、いまや働き盛りのパパである。その琴線に触れる企画をだせば、彼らは子供たちと共に劇場に押し寄せ、ウルトラマン映画は成功する。そんな方程式を前作「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」(06年)で読み取ったか、今回はさらにそのコンセプトを推し進めた作品を出してきた。結果、前売りはなんと5万枚以上も売れ、この公式はいまだ有効と証明された。
少年時代、アスカ、我夢と共にテレビの「ウルトラマン」に夢中になったダイゴは、成長した現在、平凡な公務員として横浜で暮らしている。ところがあるときから、ハヤタさん(黒部進)やモロボシさん(森次晃嗣)、郷さん(団時朗)や北斗さん(高峰圭二)など仲のいい街の人々がウルトラマンになる不思議なイメージを見るようになる。夢と切り捨てるにはあまりに実感を伴う体験を不思議に思う中、ついに本物の怪獣が現れる。
平成三部作を鑑賞した方にとっては奇妙なあらすじと思うだろうが、ようするにこの世界はテレビシリーズとは別のパラレルワールド。ウルトラマンは実在せず、テレビの中だけのヒーローだよ、という設定だ。その意味では、私たちが生きる現実世界とほとんど同じといえる。ここではダイゴたちもハヤタらもただの平凡な社会人。パン屋さんやレストランなんかを経営して、のどかきわまりない。
ところがそこに怪獣が現れる。時空を移動してきた"あの"極悪宇宙人が、ウルトラマンのいない世界を狙い撃ちしてきたというわけだ。他の平行世界でヒーローだったダイゴたちは、いったいどうやってこの状況に立ち向かうのか。
こうしたややこしい話にしたのは、作品設定上、同居できない平成三部作(ティガ、ダイア、ガイア)と昭和のウルトラシリーズを融合させるため。ウルトラシリーズは膨大な数が作られており、平成三部作のようにM78星雲とは無関係なヒーローも生まれている。それらを一つの映画に共演させるための、ユニークなアイデアと言える。
二つの世界観をつなぐのは実質的な昭和シリーズの最新ヒーロー、メビウスの役目。私は華やかな彼の戦いは大好きだが、本作では痛快なかませ犬っぷりを発揮。別の意味でファンを涙させる。途中から完全に忘れ去られる姿が悲しい。
逆に主役の座に座るのがティガ(長野博)。彼とダイナ、ガイアが初めて変身するシーンは必見のかっこよさ。引っ張りまくってついに反撃、という王道の展開がよろしい。こういうまっすぐなヒロイズムは気持ちの良いものだ。
昭和シリーズからは4人のウルトラマンが登場するが、さすがは元ヒーロー。演じる役者たちの渋いこと。本作ではそれぞれの奥さん役でヒロインも総登場、おまけに吉本多香美はじめ各夫婦の娘役はすべて実子ときた。ほかにもあちこちに「ホントの家族」が登場する、妙にアットホームな布陣となっている。
個人的には熟女ヒロイン軍団によるフラシーンに仰天した。アナタたちはおいくつですかと問いたくなる迫力だが、アンヌ(ひし美ゆり子)などはいまだに可愛く見えてしまうから恐ろしい。我ながら優秀な脳内変換機能を有していると思う。
職人芸ともいうべきミニチュア&着ぐるみの特撮も絶好調で、たとえ細々とでもこうした技術が受け継がれていることに嬉しくなる。本作品は7対3くらいでお父さん向きだが、この路線で完全に大人向けの何かができないものかと思う。
私は、初代マンが果たしてAタイプかCタイプかといった細部までこだわるマニアではないので、そうした方が見た場合の感想は予想できないが、普通に昭和シリーズを楽しんだ世代がファミリーで見に行くには十分なクオリティではないかと判断する。なによりストーリーがいいし、奇をてらわず堂々とヒーローもののど真ん中をゆく横綱勝負が心地よい。
これがヒットすれば、もう少し予算もついてさらに大人の鑑賞にたえるものが出来るかもしれない。そう思うとどうしても応援したくなってしまう。