『今日も僕は殺される』50点(100点満点中)
The Deaths of Ian Stone 2008年9月6日(土)より、銀座シネパトス他にてロードショー 2007年/イギリス・アメリカ/カラー/87分/配給:ショウゲート
監督:ダリオ・ピアーナ 出演:マイク・ヴォーゲル、クリスティナ・コール、ジェイミー・マーレイ

毎日誰かに殺される男が、理不尽な無限ループから抜け出すには?

08年6月に亡くなったスタン・ウィンストンという特撮マンがいる。『エイリアン2』や『ターミネーター』『シザーハンズ』に『ジュラシック・パーク』といった、そうそうたる経歴で知られるSFX界の巨匠だが、この『今日も僕は殺される』が最後のプロデュース作品となってしまった。

人気ホッケー選手のイアン・ストーン(マイク・ヴォーゲル)は、計測時計の不具合で試合に負け、ふてくされていた。その晩、恋人のジェニー(クリスティナ・コール)を送った彼は、踏切の線路上に誰かが倒れているのを見つける。車を降り、おそるおそる近づいてみると……。

この映画の主人公は、毎日毎日誰かに殺されるという不条理な体験をする。そのたびに違った人生、日常にワープし、何事もなかったかのように暮らし始めるが、前世?の記憶がよみがえると途端に猛烈な違和感にとらわれる。どの日常にも現れる謎の男、悪意を持った集団、そして恋人。この奇妙な出来事の真相とは? 彼の宿命とはなんなのか。サスペンスにもとれるあらすじだが、むしろ現実的な範疇にとどまろうとしているホラームービーと考えた方がよい。

ダリオ・ピアーナ監督はイタリアを中心に多数のCM制作を手がけた人物で、その出自に似合ったスタイリッシュな映像を得意とする。低予算ながらその腕前と、スタン・ウィンストン配下のスタッフの力により、クラスレスな印象の作品に仕上がった。そのスマートな出来映え、ムードを味わう映画といってよい。

とくに、背景に見え隠れする影の存在や、そこから恐ろしいものが実体化するあたりのスムースな流れは、映像面での大きな見所。もしここがオモチャっぽい仕上がりになっていたら、この作品は成立しなかったろう。

どこに行っても殺されてしまう、殺人・事故一手に引き受けます的な主人公を見ていると、たいへん気の毒になってくる。彼がその無限ループから抜け出すために必要なものとは何なのか。そのあたりがややありきたりで、もっとひねってほしかったとは思う。悪夢体験をもとに作った話というが、そうした体験の恐怖はえてして本人以外には伝わりにくい。良くも悪くもこじんまりとまとまっているが、個人的にはもっと大きな驚きを与えてほしかったところ。

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