『LOOK』60点(100点満点中)
LOOK 2008年9月6日(土)より、シネセゾン渋谷にてレイトロードショー 2007年/アメリカ/カラー/102分/R-15 配給:トルネード・フィルム、AMGエンタテインメント
監督:アダム・リフキン 撮影監督:ロン・フォーサイス 視覚効果監督:スコット・ビラップス

監視カメラの映像を集めた問題作

人は、誰も見ていないところでは予想外のバカをやる。それをのぞき見ると、ときにはコメディ、ときにはエッチな、そしてときには恐怖の犯罪ドラマを味わうことになる。

『LOOK』が始まると、スクリーンに下着の試着室の映像が映し出される。そこにいかにも頭の弱そうな女子高生二人が入ってくると、ためらいもなく服を脱ぎ始め、少々過激なブラやTバックに着替え出す。やがて互いのカラダの品評会が始まり、尻の穴をもっと白くしたいなどと、親が聞いたら2歳くらいから教育をやりなおしたくなるような、どうしようもない会話をし始める。

ここまでで観客はすでに気づいているが、これは姿見の裏側に設置された監視カメラによる盗撮映像。

日本で試着室にカメラを仕掛けるのはマニアックな変態かアングラ業者と相場が決まっているが、米国は違う。あちらの法律では、たとえ裸になる場所であろうと防犯カメラを仕掛けてならないという規制はない。二人のティーンたちも、よもや自分の尻の穴が映画化されているとはつゆ知らず、無防備に裸をさらし続けているのだ。

──と書いては見たものの、会話まで鮮明に録音されていることでわかるとおり、実際に一般人を撮影したわけではない。すべて役者によるフェイクだ。ちょいと残念な気もするが、普通のギャルにしてはスタイルが良すぎる点などは、男の夢を壊さぬ配慮といえ、素直に喜ぶべきであろう。

ともあれ『LOOK』は、最近米国で流行中のPOV(主観映像)映画、ドキュメンタリー風ドラマの一種というわけだ。この手のアイデアは予算節約を重要な目的として行われることも多いが、本作の場合はそれだけではない。あくまで社会への問題提起の手法として採用されたといって良い。

というのもこの映画、ここから先、なんとすべて防犯カメラから撮影された映像のみで進行するのだ。フィックス(固定撮影)はもちろん人物へのクローズアップも、パン撮影も、最低限"映画"のために必要なアングル、撮影手法を防犯カメラだけでカバーしてしまっている。そこで驚かされるのは、街中に設置されたカメラの数がいかに多いかということだ。

監督が意図しているのも、要はそういうこと。これを見ると、普段気にとめないカメラの存在が、いやでも気になるようになる。映画館を出た後、きっと観客はあちこちの防犯カメラに気づくだろう。見る前と見た後では、世界の見方が変わる。社会派映画としては、ある意味満点といえる。

米国人が一日に録画される回数は平均200回だそうだが、日本の場合も似たようなものだろう。折しもGoogleがストリートビューなるサービスを日本でも開始したばかり。いち民間企業が、とてつもない量の映像情報を保有し、ネット上で誰でも見ることができる。まったくもって、とんでもない時代になった。私はインターネットを使い始めて10年以上たつが、このサービスの衝撃はその間のナンバーワン大事件といってよい。

防犯のため、犯罪抑止のため、あるいは単に利便性のため、あちこちにカメラが仕掛けられている。単純にそれらを肯定できる無邪気な人はよい。だが多くの人は、そこに言いしれぬ不気味さ、気持ち悪さを感じ、どこかで線を引かねばならぬと考える。その最初の一歩として、『LOOK』を鑑賞するという選択肢は間違っていない。

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