『セックス・アンド・ザ・シティ』70点(100点満点中)
SEX and the CITY 2008年8月23日全国東宝洋画系にて公開 2008年/アメリカ/98分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by ヒューマックスシネマ
監督・脚本:マイケル・パトリック・キング 衣装:パトリシア・フィールド 出演:サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス

人気米ドラマSATCがゴージャス映画化

日本では、テレビドラマの映画化は内容が薄っぺらということで、映画ファンからはそっぽを向かれている。では、本場アメリカの場合はどうか。

6年間にわたりHBO(米のCATV局)で放送され、女性たちの共感を集めまくった『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画化は、公開されるやロマコメ映画史上一位。女性が主演する映画としても「トゥームレイダー」を抜き歴代一位という記録的スタート。「TVドラマの映画化は手堅くヒットする」という法則は、とりあえず日米共通といえそうだ。

テレビ版最終話から4年後。人気コラムニストのキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)は、ついにミスター・ビッグ(クリス・ノース)との結婚を決める。一夜限りの男を渡り歩いてきたサマンサ(キム・キャトラル)は、乳がん発覚時に支えてくれた年下の俳優スミス一筋。そのエージェントとしてハリウッドで暮らしている。中国から養子を取ったシャーロット(クリスティン・デイヴィス)は、愛する夫との間に思いがけず妊娠が発覚。だがミランダ(シンシア・ニクソン)だけは、夫の浮気や仕事と家庭の両立に深く悩んでいた。

すでに40代〜50代となる4人のヒロインは、相変わらずブランドに囲まれ、ハイレベルな仕事をこなし、恋に振り回されている。そこらの男たちを上回る収入と地位、素敵な部屋とブランド品は(主に独立志向の)女性たちの憧れ。一方、あまりに幼い恋人との立ち回り方、悩み等々は共感の対象というわけだ。

その双方を満たすため、異様とも言うべき非現実的な人物設定となっているのが特徴だが、それを一切感じさせぬキャラ立てのテクニックはさすが。とくにサマンサのキャラクターは、男からすればほとんど妖怪かホラー映画の怪物に近いものがあるが、この映画で見ると妙に可愛げがある。隣人のハダカに欲情する気持ちがなんとなくわかるからか。

たとえお腹が出ていても、肌がくすんでいても、精一杯生きている4人は変わらず魅力的で、観客の好感を得ること間違いない。私のような男が見てもそれは同じだ。

映画版ならではの、ゴージャス極まりない数々の見せ場。結婚が決まったヒロインは、ヴィヴィアン・ウエストウッドから純白のドレスを贈られる。ヴォーグ誌からは彼らが誇るカメラマンと衣装、そして○○○○によって表紙撮影をプレゼント。恋人からはだだっ広いウォークインクロゼットを贈られる。

これぞまさに夢の世界。ちなみにVOGUE編集部で長編映画が撮影されたのは本作が初。ここから世界に流行が発信されると思うとワクワクする。

一方、失恋した場合にも、登場人物には理想の精神的リハビリが用意される。親友3人がつきっきりで介抱し、メキシコのリゾート地で最高の景色を眺めつつ寝放題。どちらにしても、観客の女性はうっとり。ああいうのいいわねえ状態となる。

試写室はオンナノコたちで異例の超満員、たいへんな注目度の本作。私の隣に座ったその一人(推定45歳)もバカウケだったし、一般の女性ファンを大満足させることは確実だろう。

結末もなるほどの着地点、とくに私はサマンサのそれに大納得であった。彼女もまた、他の3人と同じものを得ているのだ。

50歳で作れるならば、60でもいけるだろう。10年後のSATCを私は見てみたい。たとえジャンルがホラームービーになったとしても。



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