『カンフー・ダンク!』75点(100点満点中)
Kung Fu Dunk 2008年8月16日よりシネカノン有楽町2丁目他にてロードショー 2008年/台湾・香港・中国合作/1時間40分/配給:角川映画
監督:チュー・イェンピン アクション監督:チン・シウトン 撮影監督: チャオ・シャオティン 出演:ジェイ・チョウ(周杰倫)、チェン・ボーリン(陳柏霖)、シャーリーン・チョイ(蔡卓妍)エリック・ツァン(曾志偉)
イケメンたちがダンクしまくり
カンフー映画が流行中のようである。
思い出すだけでも「カンフーくん」「カンフー・パンダ」「少林少女」と、"枯れ木も山の賑わい"を地で行く魅力的なラインナップ。しかしこのバスケットボール+カンフーアクション『カンフー・ダンク!』だけは別だ。
カンフー学校の師父に拾われ育てられた孤児のファン(ジェイ・チョウ)は、夜の公園でさえない中年男リー(エリック・ツァン)と出会う。そこでファンの超人的な身体能力を見て取ったリーは、「富豪化計画」をひらめき、ファンのマネージャーとして大学バスケチームへの売込みを開始する。
リーは典型的なダメ人間で、くだらない話を始終しゃべりまくるが根は善人で憎めない。ファンは無口で無表情な若者だが、なんだかんだいってリーのリードに身を任せる。この二人の擬似父子関係がストーリーの軸。二人の公園での出会いから路地裏での食事シーンは、短時間で両者の魅力を十二分に表した名場面で、観客を一瞬で魅了する。
撮影と音楽、編集といったアクション映画にとって特に重要な三要素が小気味良く仕上がっており、バスケットボールシーンの迫力、面白さは世界標準。監督がバスケ未経験者ということで、下手に先入観がない分、自由な絵作り・アクションを行うことができたと見られる。私は同時期に日本のバスケ映画「フライング☆ラビッツ」を見たが、結果的に試合場面を直接見比べることになり、後者にとっては不運であった。
もっともこちらは、徹底的に荒唐無稽、多数のイケメンがやたらとカッコイイポーズでダンクを決めまくる見せバスだ。しかし、演じる役者たちのバスケ技術も、付け焼刃には決して見えない。この、「本当に上手に見える」という点はスポーツ映画にとって生命線ともいうべき重要ポイントだが、この映画については合格点をやれる。
クライマックスの試合の流れについては、きっと誰も予測できない。トンデモここに極まれりといった具合で、大爆笑させてもらった。バカ映画狙いというわけでは決してないのだが、バカ方面への流れを抑制する気はないようだ。
終盤は欲張りすぎてくどくなった上、ゴタゴタしてしまったが、個人的にはこういうベタつき具合は嫌いではない。笑って、驚いて、最後はホロリ。人間ドラマを重視したおかげでキャラが立ち、結果的に本国で大ヒット。続編製作も決定した。確かに、彼らのドラマをもう少し見たいと思わせるだけの魅力がある。
主演のジェイ・チョウってのがまた面白い男で、夢は実写版「ドラえもん」の監督。来日してそのプロットを熱弁したという、ちょっとKYな親日家だ。思わず応援したくなる、これもまた憎めない若手俳優である。