『ベガスの恋に勝つルール』65点(100点満点中)
What happens in VEGAS 2008年8月16日よりみゆき座系ほか全国東宝洋画系にてロードショー 2008年/アメリカ/99分/配給:20世紀フォックス映画
監督:トム・ヴォーン 脚本:デイナ・フォックス 撮影:マシュー・F・レオネッティ 出演:キャメロン・ディアス、アシュトン・カッチャー、クイーン・ラティファ

キャメロン・ディアスとアシュトン・カッチャー共演のロマコメ

初来日したアシュトン・カッチャーは、16歳上の奥さんデミ・ムーアを引き連れ、結果的にキャメロン・ディアスを加えた3ショットという、ゴージャス極まりない絵を日本のマスコミに提供してくれた。

まだ50代だった父親を亡くしたばかりで顔色の悪いキャメロンに比べ、全米ティーンからダントツの人気を誇るハンサムボーイの寵愛を受けるデミ・ムーアの貫禄は圧倒的。ハリウッド有数の高給取りであるはずのキャメロンが、逆に気の毒になるほどであった。

そんなわけで、日本でも徐々にそのカリスマ性が広まりつつあるアシュトンは、本作でもすさまじいオーラ、あるいはフェロモンを発している。ちなみにデミ・ムーアはこの映画には出ていない、念のため。

家具工場を解雇されたジャック(アシュトン・カッチャー)と、恋人に振られたばかりのキャリアウーマン、ジョイ(キャメロン・ディアス)。二人はそれぞれ親友を引き連れ、気晴らしにやってきたラスベガスで出会った。酒の勢いで意気投合(したかに見えた)二人は、酩酊状態のまま結婚。翌朝ベッドで目を覚ましたとたんに激しく後悔、一転して興ざめムードになってしまう。ところが別れ際、ジャックがジョイの硬貨で引いたスロットが大当たり。300万ドルの賞金をめぐって、二人は見苦しい争いを開始する。

まるで、脚本スクールの教科書に載っているかのようなストーリーである。しかるべきキャラがしかるべき場所に配置され、コンピュータのプログラムのように予想通りの動きをする。むろん、それは偉大な先人たちによる長年のアイデアの蓄積から生み出されたパターンであるから、決してつまらないことはない。

ただ、キャメロンはどう間違えても金融マンには見えないし、アシュトンも家具職人には見えない。アシュトン・カッチャーとキャメロン・ディアスは、どこから見てもアシュトン・カッチャーとキャメロン・ディアスである。その意味ではこれ、脚本家と役者の芸(というより個性?)を素直に見せていただく映画であり、役柄に感情移入してどうこうする楽しみ方はまったく適さない。

それにしてもアシュトン・カッチャーの美男子ぶりときたら、薄汚れたワークシャツを着てもキマってしまうのだから凄い。きっと、バカみたいに着丈の長いアメアパの安Tシャツ1枚でパリコレ会場を歩いていても、彼なら違和感はないだろう。

パーティーの場面でパリっとジャケットなんかを着こなした日には、これはもう別の生物になってしまう。美男美女が集まるハリウッド映画の画面においても、この男とキャメロンのスタイルの良さは異常レベルに達しており、周りの出演者から浮きまくっている。

そんな二人がすました顔をして、ニューヨークの庶民を演じるのだからたまらない。これに比べたら、ロードオブザリングの方がよっぽど現実に近い。

だがそんな彼らがお下劣ギャグを連発する姿は、これは素直に面白い。シモネタに強いというのは、この二人の最大の強みでもある。あんなに綺麗なのに、バカバカしいことをやってくれるので、妙に好感度が高いのである。イケメンは黙っていても、エロネタを言ってもモテる。これぞ厳然たる格差社会、グローバリズム万歳である。

映画はそんなわけで、あまり小さいお子さんや、初デートのカップルには刺激が強すぎる。ラブコメの王道を突っ走るつくりではあるが、少々お下品で過激な内容も含むことに留意して、選択するとよいだろう。



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