『東京オンリーピック』4点(100点満点中)
2008年09月26日よりDVDリリース 2008年8月8日(金)〜8月24日(日)新宿バルト9にて公開 2008年/日本/カラー/128分/配給:アスミック・エース
総監督:真島理一郎 クリエーター:中尾浩之/P.I.C.S.、江口カン/KOO-KI、神風動画、五月女ケイ子×細川徹、AC部、古屋雄作、児玉徹郎、中野裕之、谷口崇、澤田裕太郎、筧昌也、Bill Plympton、Richard Fenwick、Ignacio Ferreras 公式テーマソング:中川翔子 ナビゲーター:茂木淳一
「スキージャンプ・ペア」の監督が競技規模を拡大
いよいよ北京五輪が始まる。一方、石原東京都知事は、今後の東京五輪誘致をあきらめていないという。そんな状況下、「スキージャンプ・ペア」で一躍名をはせた映像作家、真島理一郎は『東京オンリーピック』をリリースした。
「スキージャンプ・ペア」はのちに映画にもなった大ヒットDVD。二人で飛んだ方が飛距離が出るなどといった架空の理論のもと、とっぴなフォームでスキーのペアジャンプを行う3D-CG作品だ。本物の中継映像と同アングルによるカメラや、大真面目な実況が笑いを誘う、遊び心にあふれた一品である。
『東京オンリーピック』は、そのコンセプトをさらに拡大。「女子ヘルマラソン」やトライアスロンならぬ「ホームアスロン」などといった、名称だけでもバカさ加減が想像できる多種の競技を見せていく。オリンピック中継のパロディなので、各競技をつなぐスタジオ進行などは、その雛形を最大限利用する。
真島理一郎は総監督として開会式などを担当。各競技は世界各国から合計16人の監督を別にたて、通常の2Dアニメや実写映像など、それぞれの作家の個性によってまったく違った味付けの短編バカ映像が楽しめるようにしてある。
オムニバスであるから、各監督の力量によって、作品のクォリティにバラつきがあるのは仕方がない。だが、すべてをまとめる真島理一郎による3DCGパートのつまらなさといったらない。
初期の「スキージャンプ・ペア」は、一見本物っぽい雰囲気の中、一部をいじることにより意外性とユーモアを生みだした。これぞ笑いのお手本といったつくりであり、話題になったのもうなづけた。
しかしこれはひどい。もはや、奇をてらう事しか頭にないといった様子で、繰り出すギャグらしきものが、ただのひとつも笑えない。試写室には約50人が座っていたがもちろん反応は皆無。これが俗に言う寒い空気というやつか、と感心したほどだ。
ネタがもう、すべて思いつきレベルであり、取捨選択をした様子もない。手を抜いたのでなければアイデアが枯渇したとしか思えず、これは作家として深刻な事態である。子供っぽい、という表現がこれほどぴったりくる作品は近年見たことがない。各国代表が集まる五輪のパロディとくれば、民族ネタ政治ネタ等々、ほかにいくらでもやりようはあると思うのだが。
劇場公開用はいくつかの競技を丸々削り、本来3時間半あるオリジナル版を128分にまとめたもの。2時間だけでもキツいのに、3時間以上もこれを見たがる人がいるなんて、世の中は広い。
むろん、笑いのツボは千差万別であり、鑑賞時の環境によっても変わってくる。とくに、これを一人で映画館でみるのと、パーティでBGVとして流すのでは大違い。だからむげに否定はしないが、鑑賞時は細心の注意を払って選択すべき作品であることだけは間違いない。