『俺たちダンクシューター』70点(100点満点中)
SEMI-PRO 2008年8月9日、渋谷シネマGAGA!他全国順次ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/90分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ
監督:ケント・オルターマン 脚本:スコット・アームストロング 撮影:シェーン・ハールバット 出演:ウィル・フェレル、ウディ・ハレルソン

70年代に米国に実在した、エンタ性重視のバスケリーグとは?

アメリカトップクラスの人気コメディアン、ウィル・フェレルは、あちらのコメディに疎い日本ではご多分に漏れずまだまだ無名だ。しかし小規模公開ながら高いパフォーマンスを記録した「俺たちフィギュアスケーター」(2007)の成功のおかげで、続く本作も無事公開にいたった。

そして予想通り、映画会社は原題とは無関係な「俺たち」を邦題にくっつけた。今後のウィル・フェレル作品の邦題における「俺たち」率は、きっと恐るべき高さになるであろう。

70年代のミシガン。この時代には、競技志向のNBAに対してエンターテイメント性を重視したABA(アメリカン・バスケットボール・アソシエーション)が存在した。

元一発屋の歌手ジャッキー(ウィル・フェレル)は、昔のヒット曲の印税でフリント・トロピックスを買収。夢だったバスケチームオーナーになると同時に、選手兼監督としても活躍していた。しかし万年最下位の弱小チームのこと、客足は途絶え気味。さらにリーグ廃止の知らせが入り愕然とする。ところが最終シーズン、上位4チームだけはNBAに編入できることになり、ジャッキーと選手は最後の望みをかけて猛特訓を開始する。

予告編から感じられる"おバカ映画臭"は、意外と本編からは感じられない。とっぴな設定の登場人物や、ナンセンスなギャグで笑わせるようなこともさほど無いし、ストーリーもまともだ。むしろ、だめ人間たちが頑張り、それなり(あくまでそれなり)の希望をつかむルーザー映画、といったほうがしっくりくる。

ただし会話の過激さは相変わらずだし、ウィル・フェレルが歌う"ヒット曲"は、ありがちな歌詞や70年代くさいメロディのわざとらしさなど、さすがに笑わずにはいられない。全体的な「笑える度」はかなり高い。

一方でスポ根的なお涙頂戴もあったりして、笑ったりないたりこちらも忙しい。マヌケなやつらやバカな連中への、作り手側のとめどない愛のようなものが感じられる。

バスケシーンなどは本場のアメリカ映画だけあり、こんなコメディでも迫力十分。話自体は実話ではないが、ABAは実在したリーグだし、最終シーズンに4チームがNBAに移り生き残ったという逸話も本当だ。

主人公のチーム以外はすべて実在のチーム名とユニフォームを使用、股の下からフリースローするシーンなども、有名なABA選手のリック・バリーを髣髴とさせる。バスケットボールに詳しい人が見たら、ほかにもきっと色々な小ネタに気づくに違いない。

客寄せのために主人公が特設リングでクマと戦う、藤原組長もびっくりの客寄せアイデアを実行する場面があるが、このクマはベテラン俳優動物ながら撮影終了後に調教師を食い殺す事故を起こしている。これがクマでなければ、作品の公開自体が危ぶまれたところだろう。

そんな不運に見舞われたものの、映画自体は鑑賞後感の良い、とても気持ちいい作品だ。たくさん笑って、迫力のダンクに喜んで、すっきり気分で帰路につける。



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