『ドラゴン・キングダム』30点(100点満点中)
The Forbidden Kingdom 2008年7月26日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/105分/配給:松竹
監督:ロブ・ミンコフ 脚本:ジョン・フスコ 撮影監督:ピーター・ポウ アクション監督:ユエン・ウーピン 出演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー、マイケル・アンガラーノ、リー・ビンビン

ジャッキー・チェンとジェット・リーが待望の初対決

今週はカンフーの映画が重なったが、話題性はこちらがダントツ。なんといってもジャッキー・チェンとジェット・リーが共演、しかも対決シーンがあるというのだからたまらない。長年の友人同士というこの二人が、スクリーンで戦うというのはもちろん史上初。実現しただけで嬉しいようなほっとするような、そんな気になる大ニュースである。

カンフーオタクの青年(マイケル・アンガラノ)は、不良仲間に脅され馴染みの質屋の強盗の手引きをさせられる。だが、成り行きで店主を仲間が撃ってしまう。瀕死の店主から金の棒を託された青年はそのままタイムスリップ。そこに現れたルー・ヤンなる酔拳の達人(ジャッキー・チェン)と出会う。彼によれば、その棒は悪の将軍により封印された孫悟空の持ち物「如意棒」だという。

ここから主人公の青年は、酔拳ジャッキーや謎の刺客ジェット・リー、美少女戦士(リウ・イーフェイ)らと出会い、協力しながら孫悟空へ如意棒を返却しに行くという流れ。その中で、世紀のJJ対決が用意されている。

ジェット・リーにとって長年の願いだった、西遊記をアレンジした実写作品。監督は「ライオン・キング」(1994)や「ホーンテッドマンション」(2003)など、実写もアニメも手がけるロブ・ミンコフ。そこに「グリーン・デスティニー」(2000)の撮影監督や「マトリックス」シリーズのアクション監督ユエン・ウーピンを加えた万全の体制。

……だったのだが、結果を言えばそのユエン・ウーピンがせっかくのジャッキー&ジェットの共演を台無しにしてしまった。

ご存知のとおり、3人とも自らアクション演出ができる、それも一流の人材であるが、今回はユエンが参加したことで、残りの二人は口を出さず、アクション構成はすべて彼に任せたと語っている。だがこれが曲者で、ユエンによるワイヤーワークの乱用、および過剰なまでのCG演出によって、最高の才能二人による戦いの密度が大きく薄められてしまった。

極端な話、そんなものは二人でなくとも出来る。ユエン・ウーピンは、今回ばかりは自分の個性を抑え、二人の動きを引き立てる事にすべての力を注ぐべきであった。ファンが見たかったのも、そうしたストリクトな一戦だったはずだ。西遊記がファンタジーだからといって、二人の対決をシンプルに演出していけない決まりはない。身に着ける衣装も、体の動きを見えにくくするデザインでいただけない。

これでは最高の素材をヅケにした上、唐辛子とたっぷりの安っぽい調味料で味付けたようなもの。元々の味わいなどまったくわからない。

ファンが一番期待する部分にすべての才能を集結させるんだ、との確固たる意思が感じられなかった以上、厳しいようだがこの点数で。



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