『スターシップ・トゥルーパーズ3』65点(100点満点中)
Starship Troopers3 2008年7月19日(土)より 新宿ジョイシネマほか全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/105分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督・脚本:エド・ニューマイヤー 撮影:ロレンツォ・セナトーレ 出演:キャスパー・ヴァン・ディーン、ジョリーン・ブラロック、ボリス・コジョー
スターシップ・トゥルーパーズ、一作目の正当なる続編
『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズは日本では特別な人気がある。本国ではDVD販売用だった超低予算のパート2も劇場公開されたし、この3作目も世界に先駆けて一番早く映画館で見ることができる。
なんといってもハインラインの原作『宇宙の戦士』に登場するパワードスーツのアイデアは、ガンダムをはじめとするロボットアニメとして日本で花開いたのだ。しかもこのパート3には、予算と技術上の都合によりパート1の監督ポール・バーホーベンが涙をのんで諦めたそのオリジナルパワードスーツ"マローダー"が満を持して登場する。何をおいても見に行ってやるのがSFファンの礼儀というものだ。
一時は優位に立った対バグズ戦争はさらに激化、泥沼化の様相を呈していた。高まる反戦運動を強引な取り締まりと処刑によって抑えてきた連邦政府は、実用化された惑星破壊兵器に戦況の打開を託していた。そんな中、英雄ジョニー・リコ大佐(キャスパー・ヴァン・ディーン)率いる惑星ロク・サン防衛軍に、国民的人気歌手でもある総司令官アノーキ(スティーヴン・ホーガン)が現れる。時を同じくして、基地に不審な出来事がおき始める。
シリーズ通して脚本を担当してきたエド・ニューマイヤー監督は、SF映画の巨匠ポール・バーホーベン監督による1作目の純粋な続編としてこれを作った。夢よもう一度、というわけだが予算は超大作だった一作目の5分の1。それでも前作の約3倍だから、最新のVFX技術の助けにより結構な規模の戦闘アクションを見ることができる。
やたらと分厚い装甲を持つ巨大昆虫は、相変わらずプラズマ砲だの自爆昆虫(……。)といった異常に強力な武器を手にやりたい放題。それに対し人類軍は、ちっぽけな突撃銃で武装した歩兵が立ち向かうのみ。惑星間航行さえ自由にできる科学力を持っていながら航空支援の一つも無い。兵隊さんは雄たけびをあげて勇ましく突撃しながら、次々と虫の滋養たっぷりなエサとなる。
軍事的な見地からすれば、あまりにマヌケで理にかなわぬ行動の連続だがそれもシリーズの味。しかも今回はなんと第一次大戦を意識したかのような塹壕戦が中心。実際に敵と相対する下っ端の兵士たちの悲惨な死に様を、これでもかと描写する。
ジェンダーフリー論者が歓喜する理想の平等社会ということで、男女一緒にシャワーに入ったり最前線で公平に八つ裂きにされたりする。相変わらずのステキな世界観だ。
勇ましい戦争娯楽映画を装いながら、そのじつ反米反戦テーマを描いていたとんでもない一作目と同様、この最新作も反骨精神あふれる政治映画になっている。戦争賛美の戦意高揚映画をパロった形でおちょくる様子はじつに痛快。
この味付けが、ただのB級SFアクションとの決定的な差となっている。なんといっても、軍の総司令官が歌手というふざけた設定がたまらない。そんな軍隊、誰も入りたくない。
正直なところ、最後のラブシーンも含め、全編に漂うアホパワーが強大すぎて、政治だ反戦だなんて主題を論じる気にもならないが、これはこれで大いにあり。4作目以降もこの監督で、ぜひ続けてほしいと願いたい。