『ワン・ミス・コール』50点(100点満点中)
One Missed Call 2007年7月19日(土)より、角川シネマ新宿ほかロードショー 2008年/アメリカ/製作:カドカワ・ピクチャーズUSA、アルコン・エンターテインメント、インターメディア・フィルム・エクィティーズ/1時間28分/配給:角川映画
監督:エリック・ヴァレット 原作:秋元康 (角川文庫「着信アリ」) 脚本:アンドリュー・クレイヴン 出演:シャニン・ソサモン、エドワード・バーンズ
三池崇史監督&柴咲コウ主演『着信アリ』のハリウッドリメイク
和製ホラー『着信アリ』シリーズにおける「携帯電話によって呪いが伝播する」という秋元康のアイデアは、なかなか質の良いお茶っ葉であった。アジア各国でもこの味は受け、結局同じ茶葉で3回も4回も出す事になった。さすがにもう出ないだろうと思ったら、その出がらしを今度はハリウッドに持っていった。どうせアメリカ人は味オンチだから大丈夫、というわけか。
女子大生レアン(アズーラ・スカイ)の携帯に、聞いたこともない着メロが流れる。留守電には3日後の日付で彼女自身の悲鳴のようなものが録音されていた。それを聞いた親友ベス(シャニン・ソサモン)の頭には、つい先日赤いキャンディを口に自宅の庭で溺死した別の友人シェリーの悲劇がよぎるのだった。
ただひとり不気味な着信のことを信じてくれる男性が、この米国版では被害者たちと似た形で妹をなくした警察官だったりする。その程度の違いはあるものの、中盤までの展開はおおむね日本版オリジナルと似通っている(その後どうなるかはお楽しみ)。
死の着メロはより切なくシンプルなものに変更された。日本版のものが脳裏に焼きついているので、新しいほうはなかなか覚えにくい。
このメロディを聞いたお気の毒な若者たちには、通常見えない「おそろしきもの」が見えるようになるというのが追加アイデア。米国のホラー映画らしく、そのへんはVFXを使ってわかりやすく、見るからに不気味に表現される。ショックシーンも同様で、列車と激突する瞬間までモロ見せするのだからたまらない。怖がりな人にはたまらないサービスである。
オリジナル『着信アリ』の面白いところは、若者にとっての安全地帯が次々と失われていく時代性豊かな演出。携帯なんてバッテリを抜けば大丈夫、水没させちまえば大丈夫、テレビ局にいれば大丈夫……。そうした常識が通用しない相手、という点がポイントである。
着信音を相手ごとに自在に設定する若者にとって、予期せぬ着メロが流れることは大きな不安と混乱を呼び起こす。着メロなんぞ購入時からいじりもしない年寄りには、この怖さは理解できない。変なトコ押しちまったかな、で終わりである。
そういう意味でこのホラーの演出上のキモは、どこまで若者の感性に近づけるかにつきる。その点、日本版の一作目はうまくいっていたが、これはそもそも米国のティーン向けに調整されたもの。よってオリジナル版に比べれば、多少なりとも日本人のセンスから離れているのはやむをえない。
たとえるなら、出がらしにケチャップをかけて、アメリカ人の大好きな味に仕立てたリサイクル料理。それはそれでいいと思うが、新鮮な煎茶を飲むつもりで味わっては大変なことになるだろう。