『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』70点(100点満点中)
2008年7月12日(土)より、丸の内ピカデリー2ほか 全国ロードショー 2009年/日本/119分/配給:松竹
原作:水木しげる、脚本:沢村光彦、監督:本木克英 出演:ウエンツ瑛士、北乃きい、田中麗奈、大泉洋、田の中勇

ウエンツ瑛士による鬼太郎、第二弾

前作『ゲゲゲの鬼太郎』(07年、日本)が予想を上回る大ヒットを記録したため、比較的スムースにこの続編は実現したようだ。鬼太郎役のウエンツ瑛士はじめ、主だったキャスト・スタッフは同じ。原作を実写変換するのではなく、あえて役者の個性を思い切り前面に押し出すコンセプトも変えていない。守りを固めた、手堅い布陣のパート2といえるだろう。うまくいっているものは大きく変える必要はない。戦略立案の基本である。

若い女性の失踪事件が続き、鬼太郎(ウエンツ瑛士)は猫娘(田中麗奈)や事件に巻き込まれた人間の女子高生(北乃きい)と共に調査を開始する。原因はどうやらねずみ男(大泉洋)の失態により蘇った悪霊とわかり、鬼太郎軍団は手分けして封印のため必要な古の楽器を探すことにする。

ウエンツ瑛士は前作よりはるかに違和感のない演技で堂々の主演ぶり。間寛平の子泣き爺や室井滋の砂かけ婆もすっかり板についている。アニメとも原作とも違う、映画版独自の世界観はどうやら完成の域に達した。

だが、くれぐれも映画制作者には勘違いしないでほしいと思う。本シリーズのトリッキーな実写化は、遊び心のわかる大人のファンが多かった上、様々な奇跡的偶然が重なって成功したにすぎない。他の原作ものでやったら避難轟々になること確実。きわめて特殊なケースと認識するのが無難だろう。

この2作目は、脚本は平凡ながら、美術のバランス感覚が相変わらず良い。たとえばあの鬼太郎のマンガチックな服やメークさえ、現代日本の風景を歩いていてもギリギリセーフなレベルに調整してある。デザイナーは苦労しただろうと思う。地味ながら、こういう丁寧な仕事ぶりは高く評価してよい。

ただ問題は、田中麗奈の衣装デザインがマイナーチェンジされ、前回ファンを刮目させたナマ足が完全に隠れてしまった点。代わりにしょこたんこと中川翔子のホットパンツ姿と星野亜希(=ほしのあき)の胸の谷間を楽しめるようになっているが、埋め合わせとしては希少価値の点でまったく及ばない。いち観客として、強く抗議したい。

ただ前回に絶賛した甲斐あって、その田中麗奈の妙な猫ダンスは再登場。ある意味最大の見せ場となっている。3作目を作る際もこの2点は決して忘れぬよう、いまから要請しておく。

北乃きいをはじめ、続編にあたって豪華なゲスト出演者がそろったが、個人的には年増の人魚姫を演じる寺島しのぶに笑った。その性格設定など見るに、監督も狙っているとしか思えない。また、佐野史郎などはしばらくどこに出ていたのかわからないほどの変身ぶりで驚かせてくれる。

子供を連れて行くのはもちろん、大人が見る点もそれなりにある実写版。前作を気に入った人なら、この二作目も絶対大丈夫だと断言する。



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