『ぼくの大切なともだち』65点(100点満点中)
Mon Meilleur Ami(仏)/My Best Friend(英) 2008年6月14日(土) Bunkamuraル・シネマ他にて公開 2006年/フランス/94分/配給:ワイズポリシー
監督:パトリス・ルコント キャスト:ダニエル・オートゥイユ、ダニー・ブーン、ジュリー・ガイエ
10日間で親友をつれてこないと破産?!
フランスの名監督パトリス・ルコントは、この最新作の後3本の長編映画を監督したところで引退すると宣言した。才能とは永遠に湧き出るものではないと悟った上での引き際の判断なのかもしれないが、潔くも寂しい話である。
美術商のフランソワ(ダニエル・オートゥイユ)は、自身の誕生パーティーの席で気の強い女共同経営者(ジュリー・ガイエ)に「アナタは友達がいない」と煽られ、ならば10日以内に親友を連れてくると反論。落札したばかりの20万ユーロの壷を賭けるとまで宣言してしまう。さっそく翌日親友候補リストを作成し、上から順に当たった彼は、しかし自分が誰からも好かれていなかった事を知る。
成功と富を手にし、順風満帆と思っていた自分の人生が、じつは大いなる欠陥品だったかもしれないと知らされる。そこで狼狽する中年男の悲哀を軽いコメディタッチで描いていく。こっそり書店の店員に『友達のつくりかた』なんて本を問い合わせる後姿が笑え、いや泣ける。
そもそも親友の有無なんてのは、いい大人が悩むような問題ではないが、それに自らの破滅を賭けるというバカげたオープニング。やがて偶然であった人懐こいタクシー運転手(ダニー・ブーン)に、「友達作りのコツ」の伝授をお願いするという展開に。
しかしこの運転手にも、じつは友達と呼べる相手などいないことがすぐに明らかになる。「"誰とでも"友達になれるってのは、"誰とも"と同じだ」との台詞が切ない。中年男のともだちさがしは、やがてこの二人の不器用な友情はぐくみ物語へとつながる。
主人公ダニエル・オートゥイユの演技は決して悪いものではないが、もう少しこのキャラクターに共感させるチャーミングさのようなものがあれば、ラストの感動もひとしおだっただろうと思う。またルコント監督の演出に対しては、クライマックスのクイズ番組に入る前に踏んでおくべき階段があと一段はあったような印象。友情の崩壊と再生のエピソードが拙速かつ平凡なのが、本作最大にして唯一の難点。
それでも大人がところどころクスクス笑いながら見られる落ち着いた人間ドラマ、コメディとしては平均以上か。友情を得るのは難しく、描くのもなかなか難しい。