『幸せになるための27のドレス』50点(100点満点中)
27 DRESSES 2008年5月31日(土)より、日比谷みゆき座他全国ロードショー 2008年/アメリカ/カラー/111分/配給:20世紀フォックス映画
監督:アン・フレッチャー 脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ キャスト:キャサリン・ハイグル、ジェームズ・マーズデン、エドワード・バーンズ

花嫁付添い人を27回も務めたヒロインがウェディングドレスを着る日はくるのか

アメリカの一般的な結婚式には、新婦の身の回りの世話を焼く花嫁付添い人なる存在がいる。日本の場合はほとんど業者のサービスの範疇と思うが、あちらでは知り合いの女性に頼むのが普通らしい。『幸せになるための27のドレス』は、その花嫁付添い人ばかりを27回も繰り返しているお人よしなハイミスの恋愛物語。

少女時代に出席した結婚式に感動して以来、ジェーン(キャサリン・ハイグル)はすすんで花嫁付添い人を引き受け、他人の晴れ舞台を華々しく演出してきた。いつかは自分が主役になりたいと思いながらも、毎回仕立てる付添い人用のドレスでクローゼットはいっぱいいっぱい。密かにあこがれる上司(エドワード・バーンズ)もまるで鈍感で、恋に進展する気配もない。

結婚式なんてのは、夢から覚める前の最後のイベント──だと思うのだが、ジェーンにとっては神聖でロマンティックな人生最大の晴れ舞台。万年引き立て役のヒロインが報われる日ははたしてくるのか?! てな所がポイントのロマンティックコメディ。

傑作ドラマ「プラダを着た悪魔」(2006)に続く、アライン・ブロッシュ・マッケンナによる脚本で、前作同様働く女性が生き生きと描かれている。スターバックスの巨大なトールカップ片手に出勤する姿は米映画ではおなじみの風景だが、いつ見ても自由で楽しげだ。

ジェーンの境遇に興味を持つローカル新聞・結婚式紹介欄の記者(ジェームズ・マースデン)と、姉が憧れる上司に一目ぼれするヒロインのやんちゃな妹(マリン・アッカーマン)が出てくると、物語が動き始める。ただ、後半はかなりグダグダ。誰もが予想する展開なんだから、もっとスッキリテンポよく、と要望したいところ。ロマコメながら笑いが×というのもイライラの原因。

『幸せになるための27のドレス』を見て気づくのは、ヒロインが幸せになるために「過去との決別」という踏み絵を迫られている点。これぞ日米の感性の差といった所かもしれないが、個人的には共感しがたい。ラストのドレスは笑いどころのつもりだろうが、発想が醜悪で嫌悪感すら感じた。こういう選択をアメリカ人は好むのかな、と彼我の違いを想像する楽しみはあるが、人々がロマコメに求めるのはその手の興味ではない。

ヒロインは少女時代に受けた感動を忘れず素直に成長し、多くの人のため尽くしてきた。このせちがらい世の中、その善意は手放しで褒めてやりたいほどだ。恩を受けた人々も忘れないだろうし、その無償の善意が最後に報われる、という流れの方がよっぽど感動を呼ぶと思うのだが……。



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