『コラソン de メロン』30点(100点満点中)
2008年5月31日(土)より、シアターN渋谷他全国ロードショー 2008年/日本/カラー/77分/配給:ジョリー・ロジャー
脚本・監督:田中誠 キャスト:井上和香、西川貴教
≪井上和香&西川貴教が初主演でダメカップルに≫
青春合唱ムービー『うた魂(たま)♪』が公開されたばかりの田中誠監督最新作は、cinemusicaの第5弾。cinemusicaとは音楽と映画のコラボ企画で、プロモーションの相乗効果を狙ったビジネス企画だ。この『コラソン de メロン』は、女子高生バンドSCANDALの主題歌とコンビを組んだラブコメ作品となる。
OLの泉(井上和香)は気は優しいが仕事ができず、会社をクビになってしまう。病気がちで臥せっている同棲中の恋人ヒロミ(西川貴教)にはとても言い出せない。そんな泉の苦悩も知らず、能天気なヒモ気質のヒロミは「高級メロンが食べたいから買ってきて」などと無理を言う。泉は自分をバカにする勤め人時代の後輩にまで頭を下げ、高額バイトを紹介してもらうのだが……。
泉というヒロインは、鳥肌実がアブない風貌で演じる知能障害の男にさえ優しく接するシーンでわかるとおり、(天然ボケだが)純粋な心を持った健気な女性。シュールな笑いを担当すると同時に、このヒロインに好感を持ってもらう演出上の責務を負った鳥肌実のキャラクターは、しかしお笑い面で不発。
T.M.Revolution=西川貴教は、井上和香と共に映画初主演ということだが、「どこか憎めないヒモ」の「憎めない」ラインを時折踏み越し、終盤の感動を大きくスポイル。初主演のわりには上手いと思うが、その素質を生かしきれなかった。彼にしろ井上和香にしろ、それぞれ西川貴教以上、井上和香以上の役作りをすることはさすがにまだ無理だったか。
そもそも今回、田中誠監督(脚本も)の笑いの技がどうにも不完全燃焼でいただけない。間のとり方は抜群に上手い人のはずだが、本作では脚本を煮詰める時間がなかったのだろうか。大きな期待を抱いていただけに、この監督でもスベるのかと残念至極であった。
それでも痛々しい井上和香の献身ぶりと、西川貴教の失礼千万な態度には、思わず自らを省みてしまうだけのリアリティを感じさせた。さすがにここまでひどい事はしないにせよ、長年(いや実はそんなに長くなくても)女の子とつきあっていると、知らず知らずのうち冷たい応対をしているのではないかと気づかされる。男たるもの、釣った魚にエサをやらないどころか、優しく手をかけ錦鯉に成長させるくらいの甲斐性がなければいけませんな。