『ランボー 最後の戦場』70点(100点満点中)
Johm Rambo 2008年5月24日(土)、日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー 2008年/アメリカ/90分/配給:ギャガ・コミュニケーションズ

S・スタローンのミリタリーアクション、20年ぶりの復活

不滅のアクションスター、シルベスター・スタローンは自身の代表シリーズたる「ランボー」を「現代の西部劇」と称したが、まさに言い得て妙だと思う。

タイ北部で隠遁生活を送るベトナム戦争の英雄ランボー(シルヴェスター・スタローン)は、迫害されているキリスト教徒らに医療物資を届けたいNGO職員サラ(ジュリー・ベンツ)から、ミャンマーまで船で送ってほしいと依頼される。危険すぎると反対するも、その熱意に打たれ無事送り届けたランボーだったが、その直後にサラと仲間の職員は襲われ政府軍に拉致されてしまう。

数十年間続くミャンマーの軍事政権が、ここではまるで鬼か悪魔のごとき悪役。か弱き人民を陵辱虐殺、殺人ゲームを無理やりやらせ、地雷に手足を吹っ飛ばされる様子を見てゲラゲラと笑っている。人間味などゼロ、まるで人食い土人である。

現実にはたとえ非民主的にみえる政府でも、歴史の必然として登場した以上、何らかの存在理由があるわけだが(とくにミャンマーに関しては日本でも米国でも明らかに偏向報道がなされている)、そんなセオリーにスタローン(監督・脚本も担当)は目もくれない。西部劇におけるインディアン同様、純然たるヒール記号としてのみ取り扱う。

もっともこれが決して悪いというわけでもない。偽善的ともいうべき近年のお利口さんなアメリカ戦争映画を見飽きた身には、こうしたオールドテイストが意外なほど新鮮で楽しかったりする。本物のニュース映像を導入に使ったところでこれはランボー。ハナから正確性など期待しちゃいない。時事批判をやるにしても、このくらい大味で十分だなと許せてしまう。

ところで、パート2,3の強い印象により破天荒な軍事アクションと思われがちなランボーシリーズは、しかしパート1のころから意外と本物志向なところもある。撮影に実銃を使うのはもちろん、ソ連軍の軍事車両までイスラエルから借り受け、本物を登場させた事は有名だ。

この最新作では、戦闘シーンの人体損傷の描写にそのポリシーが生かされている。ブローニングM2という、古参兵ランボーを表したかのような古い機関銃(なんと70年間以上も現役で、今でも先進各国の軍で採用されている)を至近距離でぶちかます見せ場があるが、これなどもはや人体爆裂ショー。

あらゆる特撮技術を駆使して、すさまじい大殺戮を鮮明映像でバッチリと見せる。『ランボー3/怒りのアフガン』(88年)は1分間に1人死ぬ大虐殺映画としてギネス級と言われたが、それをダントツで引き離す大量の死体が発生する。子供だろうが女性だろうが容赦なく肉体を四散させて死ぬが、気分が悪くなるぎりぎり手前で抑えるさじ加減は巧い。

私は本作を、軍事マニアや古きよきランボー的なアクション映画が大好きな人にすすめたい。救出に向かった元SAS(世界最高峰の特殊部隊・英陸軍)隊員らエリート傭兵部隊の連中が手も足も出ずにいるところに、ただの老いぼれボート屋だと思われていたランボーが弓矢を手に颯爽と現れる瞬間の感動、熱さ。ヒロイズムとはかくあるべし。

注目はラストの、十字架を思わせる画面の中でのランボーの行動。多くの示唆を与えてくれるシーンだが、詳細についてはあえて書かない。直接皆さんの目でお確かめを。



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