『P2』70点(100点満点中)
2008年5月10日(土)より、シアターN渋谷、銀座シネパトスほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/97分/R-18 配給:ムービーアイ

OL必見のオフィスビル内閉じ込めサスペンス

外敵をシャットアウトする鉄壁のセキュリティの内側に犯人がいた場合、ガードの強さはそのまま脱出の困難さに変貌する。『P2』は、その防犯設備があだとなり、勤め先のビルに閉じ込められてしまう哀れな女の子の話だ。

クリスマスイブのニューヨーク。アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は残業のため、オフィスビルで最後の一人になってしまった。夜勤のガードマンらに挨拶して急ぎ地下駐車場に向かうが、なぜか車のエンジンがかからない。表玄関は遠隔ロックされ、エレベーターは止まり、携帯も圏外。弱りきった彼女は照明が落ち薄暗い中、当直の警備員に助けを求めるが……。

『P2』は、一言でいえば監禁サスペンス。クリスマスの夜という、特別だがありふれた設定により"がらんどうのオフィスビル"という「恐怖の場」を準備。電話や非常口といった「誰もが考えるであろう選択肢」が丁寧にひとつづつつぶされていく。その度に不安と恐怖が高まり、やがて何者かに襲撃され、アンジェラはビル内に監禁されてしまう。

これぞまさにOL専用恐怖映画。実際にはそう簡単に取り残されるはずはないが、前述したクリスマス設定をはじめ慎重な筋運びにより「これはいかにもありそう」感を実現。怖がりな女の子がこれを見たら、二度と残業したくなくなるであろう。時短とワークシェアリング意識の普及に貢献してくれるから、全国の労働組合はこの映画の上映権を買うとよい。

ユニークなのはこれ、サスペンスのくせに異様に残酷なスプラッターシーンを見せ場として含むという点。劇中何人か人が死ぬが、その死に方のひどさといったらない。さすがはR-18といったところだ。おまけにわざとゆったりした音楽を流し、それを切り裂くように突然ショックシーンをぶちかますなど、この映画の監督はたいへん性格が悪い。

ヒロインのレイチェル・ニコルズは、典型的な金髪巨乳美女。監禁後は最後まで半裸で、手錠姿に裸足で脱出を図る。OL離れしたその立派なムネを、やたらと強調したショットが多いのが特徴だ。この映画の監督はたいへん性格が良い。

舞台は無人のビルの中。ヒロインの衣装は下着みたいな布切れ一枚。登場人物はほんの数人。しかしその怖さと面白さは抜群。ずいぶんとコストパフォーマンスのよさそうな一本である。

ハイテンション アンレイテッド・エディション
本作のプロデューサー、アレクサンドル・アジャ監督作品。賛否両論の話題作。面白い。
少女監禁―「支配と服従」の密室で、いったい何が起きたのか
先日オーストリアで実娘を24年間監禁し、子供まで作っていた恐ろしい男の事件が明らかになりましたが、そうした犯罪病理の分析に挑む本。


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