『少林少女』4点(100点満点中)
2008年4月26日(土)より、全国東宝系ロードショー 2008年/日本・香港/1時間47分/配給:東宝

フジ&東宝が柴咲コウにすべてをかけた話題作

いま日本で一番客を呼べる女優・柴咲コウを主演にすえた『少林少女』は、まぎれもない2008年ゴールデンウイークの目玉。しかし、その出来ばえはまるで、剪定せずに荒れ、伸びきった盆栽。いったいどの方向から見ればよいのかわからず、またどこから見てもどうしようもない。

本場少林寺で三千日の厳しい修行を追え、日本に戻った凛(柴咲コウ)が見たのは、廃墟と化した自らの道場。日本で少林拳を普及させるつもりだった凛は落胆する。やがて彼女は、その驚異的な身体能力に目をつけられ大学の女子ラクロス部に助っ人として入部する羽目になるが、そこにはそんな凛をある企みと共に見つめる目があった。

「踊る大捜査線」の本広克行監督&亀山千広プロデューサーが、「少林サッカー」監督・主演のチャウ・シンチーと共同製作した「少林サッカー」番外編。しかし、いったい彼らが何をやりたかったのか、私には最後までさっぱり不明であった。

まず、娯楽映画としての見せ方がなっていない。"少林少女"たるヒロインのファーストスタントとなる駅前での側宙は、見事に着地でずっこけ、どう見ても失敗テイク。のっけから「なんだこりゃ?」と思わせる。

そのまま45分程度、ろくなアクションシーンもなくダラダラとまったく笑えないお猿さん芝居が続くと、ようやくラクロスが始まる。そしてスーパー身体能力(という設定の)柴咲コウが、チームメイトに少林拳の動きをコーチするという展開だ。(※読者より、少林拳と少林寺拳法は別物との指摘を受け修正しました…4/21)

しかし、ヒロインがどれだけ物凄いか観客に披露する前に、いきなり他人に教える場面なんぞ見せてどうするのか。いかに一年間この映画のためだけにトレーニングしたといえど柴咲コウは柴咲コウ。動きに重厚感がなく説得力がまるでない。これはひとえに、しかるべき順番でシーンを組み立てていない監督の責任。

スポーツものとしても惚れ惚れするほど低レベル。序盤の試合は、一人図抜けて強い柴咲コウがチームワークを乱したせいで負けた、だから彼女が協調性を学ぶと共にチームも活躍を始める……という流れだが、これは誰が見ても明らかにおかしい。試合に負けたのはチームワークなんてまったく関係なく、単にラクロス初心者のヒロインがノーコンだったため、シュートが一本も入らなかったから。見当違いの筋運びにここで再び観客は、「なんだこりゃ?」と混乱する。

そして、このままラクロスものになるのかと思いきや、いいところで余計な陰謀に巻き込まれ、今度は普通の拳法バトルものに移行。しかもその格闘スタントがちっとも弾けてない。粗悪なCGや古臭いワイヤーワークを連発。おまけに中途半端にシリアスで、「少林サッカー」に匹敵する突き抜けたおバカアクションも、ついぞ見られることがない。

作品としての軸足が定まっておらず、見所となるような目を引くアクションもない。『少林ラクロス』でも『少林柴咲』でもいいが、キッチリどちらかに決めてくれよと言いたくなる。

こういう愛嬌のないバカ映画は、煮ても焼いても食いようがない。珍作でもダメ映画でもなく、ただの駄作。こういう代物に限って作り手の自己満足が過剰に感じられ、大変うっとうしい。

しかしこのところ快音が聞かれぬフジ&東宝は、いったいどうしてしまったのか。作品が良ければ宣伝がまずく、話題性があれば肝心の中身はこのザマ。まるでかみ合っていない。このKYぶりはあまりにも深刻である。

そもそも柴咲コウほどの才能を使ってこのレベルのものしか作れないとは、これが野球選手だったら即時解雇。来年再びプロテスト受けにきてね、となるところだ。相当な危機感を持ってしかるべきであろう。

 
少林サッカー―「少林少女」劇場公開記念 スペシャル・プライス版― (初回限定生産)
公開記念だそうです。
山崎真実写真集21
「少林少女」はむしろこの人のファンにすすめたい。このすごいムネのアレがああなってまして……。
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