『ヒットマン』60点(100点満点中)
Hitman 2008年4月12日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー 2007年/アメリカ/93分/配給:20世紀フォックス映画
スキンヘッドな暗殺者・全員集合
『ヒットマン』は、(ヒット作だが)洋物ゲームが原作という、日本では集客面での不利を抱えている。そのため「女子を助ける暗殺者」との共通点をむりやりこじつけ、「名作『レオン』を彷彿とさせるエモーショナルドラマ」などと宣伝 されている。担当者の苦悩が垣間見える瞬間である。
孤児を暗殺者に育てあげる闇組織でダントツの能力を誇った"ナンバー47"(ティモシー・オリファント)は、ロシアの政治家の暗殺依頼を受ける。首尾よく狙撃に成功したと思ったが、組織からの報告では相手は生きており、おまけに娼婦ニカ(オルガ・キュリレンコ)に現場を目撃されたので消せという。不審を抱いた47は命令を無視、自分と似た境遇のニカを守りながら、真相解明に挑むのだった。
社会的弱者の象徴たる娼婦を守りつつ巨大組織と戦うヒーロー、という話のパターンは平凡だが、スタイリッシュなゲームが原作とあって映画も見た目にだけは徹底的にこだわっている。おしゃれなガンアクションを見たい人にはぴったりだ。
質量ともに豊富な銃撃戦は、アヴェ・マリアなどドラマティックな音楽を背景に緩急をつけ、まさしくよくできたビデオゲームのクライマックスのよう。二丁拳銃ならぬ二丁小銃など、リアリティはないがカッコよさだけは抜群だ。あまりにカッコいいので、どんなに突っ込み満載な行動(特にラストのどんでん返し、主人公マメすぎるよ)をしていてもそれなりに説得力がある。
主人公のティモシー・オリファントは、眼が優しいので最初から最後まで非情な暗殺者には見えない。有効狙撃距離4kmの実力があるようには、到底思えないのが難点だ。ちなみに4kmというと、ゴルゴ13の最高距離の倍以上にあたる。
髪型はスキンヘッド、服装はブラックスーツに赤ネクタイという着こなしの難しいもので、一歩間違えばお笑い芸人になってしまう。なおこの暗殺団体では、みな頭髪は剃って後頭部に商品タグのようなバーコードを彫ってある。この映画最 大の謎は、なぜ皆さん髪を伸ばしてそのド目立つバーコードを隠さないのかという点。おかげさまで後ろから見ると正体モロバレだ。
個人的な経験を言わせていただければ、スキンヘッドを保つのはえらく手間がかかる。早いと半日で毛が生えてくるので、いかつい見た目とは裏腹に、こまめなお手入れが必要なのだ。天下の暗殺同好会の皆さんが、そんな事をやっているのを想像すると思わず笑ってしまう。いや、そこまでして外見にこだわるプロ意識に、むしろ敬意を表するべきか。