『88ミニッツ FBI異常犯罪分析医ジャック・グラム』60点(100点満点中)
88 minites 2008年3月22日(土)銀座シネパトスほか、全国順次ロードショー 2007年/アメリカ/107分/配給:日活

アル・パチーノ先生の命はあと88分

『88ミニッツ』は、作り手の努力と熱意のわりにその凄さが伝わらない、一人相撲なサスペンスだ。

FBI異常犯罪分析医ジャック・グラム(アル・パチーノ)が、9年前に決定的な判断を下して有罪に追い込んだ連続猟奇殺人犯フォースター(ニール・マクドノー)の死刑執行直前、同手口の殺人事件がおきた。被害者はジャックの教え子で、しかもフォースターは犯人ではないとのメッセージが残されていた。捜査当局やマスコミが騒然とする中、ジャックの携帯が鳴り「お前の命はあと88分だ」と宣告される。

哀れなアルパチーノ先生は、しかしまぎれもない切れ者。冷静かつ論理的な推理力により、卑劣な脅迫犯および殺人犯へ逆に迫っていく。よくよく考えてみると、単に手当たり次第に周りを犯人扱いして右往左往しているだけに見えるが、あえてそこは大人のスルー。

タイトルどおり最初の携帯着信からぴったり88分間、リアルタイムで映画は進行する。なぜか美人以外いない大学を舞台に、その講師であるパチーノ先生が真実を探るテンポのいいスリラー。生死をかけた大捜査の最中というのにいきなり告られたり、セクシーな女子大生を助手にしたりと公私混同ぶりを発揮しながら、てんやわんやするお話だ。

問題はこのせわしなさで、相当ゴチャゴチャしている上、登場人物も多いため本筋がわかりにくい。あとから検証すると、話のつじつまは合っておりナルホドと思うが、鑑賞中は人の顔と名、相関関係を把握するだけでも一仕事で、そんなことまで気を使っていられない。

衝撃度の高いトリックとは、単純に見えて細部の整合性にこだわった複雑さを持っているもの。複雑にみえて複雑なものは、それほど衝撃はない。むしろ鑑賞中は、ロープなんてつかめるわけないだろ、といった些細なアラばかりが目に付いてしまう(見れば意味がわかる)。

88分間のリアルタイム進行のおかげで、次々と見所がやってきて飽きさせないが、結末でもうひとがんばりしてほしかった、というのが正直なところだ。

ロープ
現実と劇中時間がシンクロするサスペンスといえば、まずはコレか。


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