『犬と私の10の約束』55点(100点満点中)
2008年3月15日(土)全国ロードショー 2008年/日本/117分/配給:松竹
ネットで話題の"犬の十戒"を実写映画化
『犬と私の10の約束』は、良くも悪くも昔ながらの犬(動物)映画、である。
北海道、函館。大学病院の勤務医師の父(豊川悦司)と母(高島礼子)と3人で暮らす14歳の少女あかり(福田麻由子)。彼女の家の庭に、ある日一匹の子犬が迷い込む。その愛らしいゴールデンレトリーバーをいたく気に入ったあかりは、ソックスと名づけて飼うことにする。
そこからソックスとあかり、そして父母との、(決して長くない)かけがえのない時間が始まる。引越しや家族との永遠の別れ、就職、そして恋と、あかりの人生にソックスは寄り添い、忘れえぬ思い出の一部となる。映画はそれをほのぼのと、そしてせつなく描いていく。
原作、というかアイデアの元となったのは、インターネット上のあちこちで語られる作者不詳の短編詩"犬の十戒"。イヌからの語りかけの形をとった、飼い主に知っておいてほしい10の約束だ。
「私を信頼して下さい。それだけで私は幸せです」「最期の時には、どうかそばにいてください」など、犬を飼ったことのあるものなら、思わずうるっと来てしまう内容で、ネット上でも一時けっこうなブームになった。本作は、それをそのまま泣けるドラマにした企画モノ映画、である。
この十戒なる詩、個人的にはいかにも泣かせようというあざとさや、偽善的な文体にイヤ〜な感じがしないでもない。が、逆に素直に泣けてしまう、といった人には『犬と私の10の約束』も満足がいく形に仕上がっている。試写室では、女性が数名ハンカチを出して、ぐずぐずといっていた。スクリーンのみならず、そちらも含めて観察している自分もどうかと思うが。
豊川悦司や高島礼子、開始1時間をすぎるとあかりが成長して田中麗奈、池脇千鶴といった魅力的なキャストも顔をそろえる。しかし、その演技に印象に残るものはなく、皆そつなくこなしていはいるが誰がやっても大差あるまいと思わせる内容。ちょいともったいない。
逆に、子犬から老犬までのソックスを演じた何匹かの役者犬は、動物映画にありがちな「ずいぶん裏で苦労させられてんじゃないのぉ〜」という様子は伺えず、自然さを感じさせた。
日本映画界屈指の子役、福田麻由子は、相変わらずまぶしい笑顔が存在感抜群。外見上は意外と田中麗奈とのつながりに違和感はないが、子供時代があまりにはつらつとしていて、内面的にはどこか断絶している気がする。
全体的に遊び心はまったくなく、ひねりのないお涙頂戴なので、少しでも"映画作品"を期待する人には向いていない。ただ、平均以上の品質でしっかり作られているので、多くを求めないライトユーザーには十分。最初に書いたように、犬の十戒で感動できるか否かが、向き不向きの分岐点となるであろう。