『裸足のギボン』65点(100点満点中)
2008年3月8日(土)銀座シネパトス他にてロードショー 2006年/韓国/99分

母親のため、マラソンに挑戦した知的障がいの息子の感動実話

『裸足のギボン』は、2年間の準備を経て撮影された、実話をもとにしたシンプルな感動ドラマだ。

タンレイ村のギボン(シン・ヒョンジュン)は、幼いころの熱病がもとで、40歳になった今でも知能は8歳のまま。靴を履かずに裸足で駆け回り、村人の下働きをして二人暮しの母親(キム・スミ)を支えている。ある日、ギボンの足が意外と速いことをしった村長(イム・ハリョン)は、彼を全国ハーフマラソンに出場させようと考える。賞金が出ると聞いたギボンは、それで母親に入れ歯を贈ろうと、村長と二人で特訓に励むのだが……。

当初村長は、自分の功績にしようという下心もあって、(周りの反対を無視して)ギボンをバイクで引きまわす。だが、自分を100%信頼し、母親のため純粋な笑顔でひたすら頑張る姿を見て、やがて誰よりギボンの事を思うようになる。人情味あふれる雰囲気が持ち味のイム・ハリョンは、こういう役をやらせると右に出るものがいない。なにしろ悪態をついても善人にしか見えない。

「一度障がい者を演じてみたかった」というシン・ヒョンジュンは、見ている方が疲れそうな大げさな演技。コミカルにさえ感じるものの、母親のキム・スミの妙にクールな役作りと相性がよく、適度なユーモアを生み出している。

胃を悪くしたと思った母親が、自身の指先に針を刺して血を流す民間療法の場面など、韓国の田舎ならではの興味深い光景も味わえる。

音楽もセリフまわしも、スマートさのかけらもない熱くどストレートなものだが、韓国映画の場合それが嫌味にならず、すんなり受け入れられるのは不思議である。

ギボン母子、村長父子、さらにはギボンと村長の擬似的父子といった"親子の関係"を描くストーリーは、前述したとおりシンプルで、よけいな脱線をしない点がよい。二重の意味を込めた伏線を張っておくなど、より感動を盛り上げる仕掛けも悪くない。なにより登場人物がいい人ばかりで、見ていて心温まる。

マラソンうんぬんはともかく、こうした人情ドラマを楽しむつもりでお出かけになれば、そこそこの満足を与えてくれる好編といえるだろう。



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