『裸の夏 THE NAKED SUMMER』50点(100点満点中)
The Naked Summer 2008年1月19日、渋谷イメージフォーラムにてロードショー 2007年/日本/98分/配給:テレコムスタッフ
夏合宿を経て、若者たちは裸で舞台に立つ
この合宿には、踊りの経験者のみならず、まったくの初心者、それも自分探し的な目的を持つ若者までもが参加してくる。麿赤兒の舞踏を体験させるという意図らしいが、これには驚く。若者たちは、彼の舞踏に対する哲学を学び、奇妙な練習法の数々をひたすらこなすことにより、徐々に顔つきが引き締まってくる。踊りの訓練というよりは、これまでの自分を捨て生まれ変わるための、まるで宗教儀式のようだ。
その「変化」は、大駱駝艦の特徴のひとつである「衣装を着けずに舞台に立つ」ことを知らされたときから如実に現れる。合宿の締めくくりに行われる公演で、彼、そして彼女らは文字通り「裸」で観客の前に立つ。そうやって自分の全存在をさらし、踊るのだ。たとえこの合宿にはじめて参加したものであろうと、その条件はまったく同じ。だからとくに女性たちは、ここでひとつの大きな覚悟をする必要がある。カメラに収められたこのときの彼女らの表情、諦めと決意の入り混じったようなそれは、なんともエロティックである。
ドキュメンタリーとしてのつくりについては、意外なほどインタビューが少ない。もっと色々聞いてみたい欲求も起こるが、言葉よりむしろ動きを見せることで応えようとするあたり、題材たる舞踏と同じだ。
ラストの公演では、まだ"服"をきて練習していたころと、すべて脱ぎ去った本番での男女ペアによるリフトの映像が、交互に写される。彼らの成長がよくわかる瞬間だ。最初はなにやら怪しげな新興宗教のようだと思っていた観客も、そのあまりにも激しい"生"の表現に、いい舞台をみたなと満足できるだろう。
とはいえ、やはりもともと麿赤兒の舞踏に興味が無い人にはどうにもなるまいが。個人的には、なかなか気に入った一本だ。