『ペルソナ』40点(100点満点中)
2008年1月26日(土)より、シネマート六本木にてロードショー(全国順次公開) 2007年/日本/84分/製作・配給:「ペルソナ」フィルムパートナーズ
山崎真実の魅力をまだ生かしきれていない
特定のタレントが国民大多数の支持を受けていた時代と違い、"芸能人に興味を持つ人々"という母数じたいが少なく、好みも多様化する現在、アイドル映画という名のビジネスモデルはとっくに崩壊している。
その子が出ているというだけでは客を呼べない以上、どう付加価値をつけるかがカギとなってくるが、山崎真実のようなスポーツ少女の場合、やはり「とりあえず動かせ」となるのは当然といえよう。
謎の人体実験「プロジェクト・ペルソナ」により、超人的な格闘能力を得た女子大生、日和(山崎真実)。施設を脱走した彼女は、妻を失ったばかりの医師、幸一郎(萩原聖人)と出会い、やがて行動を共にする。追っ手を倒しながら逃げる最中、幸一郎は妻の行方とプロジェクト・ペルソナの悲しき真相を、同時に知ることとなる。
山崎真実は、健康的な肢体が特徴のグラビアアイドルとして知られているが、じつは新体操で国体代表に選ばれたことがあるほどの運動神経の持ち主でもある。そこでこの初主演映画は、谷垣健治をアクション監督に迎えるという付加価値が付けられることになった。ちなみに谷垣健治は香港映画界で活躍する、アクション指導のプロフェッショナル。まもなく公開の『リアル鬼ごっこ』のスタントコーディネーターも彼が担当だ。
そんなわけで『ペルソナ』は、邦画ドラマらしいシリアスかつ切ない物語でありながら、どことなく香港アクションの香りがする異色作となっている。アイドル映画としては珍しいこのムード、決して悪くはない。
二つの人格を演じる山崎真実は、思ったよりはしっかりと演技できているし、骨盤のしっかり張ったグラマーな体型は、いかにもスポーツのできる女の子、ってな感じで目の保養になる。もし運動部にこんな可愛い子がいたら、県境を越えて評判になるだろう。
映画では、スポーティーな下着姿で大立ち回りを演じ、何の必要性もないシャワーシーンで男性ファンを喜ばせる。事務所の方針とファンサービスの間でせめぎあう、妥協の産物のような中途半端な露出がなんともやるせない。
問題はその中途半端さ加減が、結果的に山崎の魅力をスポイルしているという点にある。
彼女は本当は開脚だってできるし、その笑顔は周りの空気を明るくするほど華やかなものを持っている。大人っぽい顔立ちと幼い声質のギャップもまた魅力的だ。まずはそうした"武器"をリストアップし、それを生かす脚本、演出、衣装その他を考えていけば、同じ予算でずっと良いものができたろう。どのみちこの予算規模では大作はできない。山崎の潜在力にかけた一点突破しか道はないのだ。
ウォーズマンがバッファローマンの角をへし折ったように、力を持たぬものだって力点を集中すれば、記憶に残る作品がきっと作れる。今後アイドル主演映画を作る方は、その点に留意してがんばって頂きたい。