『テラビシアにかける橋』70点(100点満点中)
Bridge to Terabithia
2008年1月26日(土)、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー
2007/アメリカ/95分/提供:東北新社、ポニーキャニオン 配給:東北新社
ダコタ・ファニングのライバル女優の魅力大爆発
『テラビシアにかける橋』は、VFXをたくさん使ったまるで『ナルニア国物語』のごときファンタジックな映画だが、根底には比較にならないほどシリアスな何か、言ってみれば"死"の空気が流れている。
その理由は、原作者で米国児童文学の第一人者キャサリン・パターソンが、執筆当時癌にかかっていた事と、息子の周辺で起こったある悲劇にショックを受けた直後だったため。この映画版も、その空気感をよく表現しており、心温まるドラマを描きながらも、全編に異様な緊張感が張り詰めている。
小学五年生の少年ジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)は、おとなしい性格のうえ貧しい事もあり学校ではいじめられっ子。一方、隣に越してきた転入生のレスリー(アンナソフィア・ロブ)は、裕福な作家夫婦の一人っ子。運動も勉強もよくできるレスリーは、しかし想像力が豊かすぎてちょっと変わり者。クラスでも浮きまくりだった。仲間はずれ同士意気投合した二人は、家の裏の森をテラビシアと名づけ、その空想の国で日々冒険を楽しむのだった。
偶然みつけた誰もこない秘密の場所。そこで二人は走り回るリスを凶悪な怪物に、大木の影を巨人に見立てて、全力で逃げ回り、ときには戦い、想像上の世界を満喫する。
テラビシアは彼らが直面する厳しい現実を忘れ、ひとときの安らぎを得るオアシスであり、明日からの日常に立ち向かうための充電、そして成長の場。同時にジェスにとっては、友達以上に惹かれつつあるキュートな女の子との、小さな恋を育む場でもある。
ここでの二人の冒険は、徐々に本格的なものになっていく。最初は、いろいろとむずがゆい"設定"を考えるレスリーに、"やや引き状態"だったジェスだが、もともと得意の絵で、こうした世界を夢想していた彼。やがてレスリーの楽しい空想ワールドにのめりこんでいく。
その変化に合わせるように、画面上ではVFXによるファンタジーワールドが、現実との境界線を溶かすように展開される。この、段階をきちんと踏んでいく丁寧な構成が、大人が見るべきファンタジーと称される所以だろう。私もこれは、きわめてリアルな、大人向けの映画だと思う。
レスリーを演じるアンナソフィア・ロブは、あのオトナコドモ、ダコタ・ファニングと同世代の若手女優。「リーピング」のイナゴ少女役、「チャーリーとチョコレート工場」のガム少女役といえば、ピンとくる方も多いだろう。プラチナブロンドに非の打ちどころない整った顔立ちは、ダコタの凶悪なまでの演技力に十分対抗しうるインパクト。見るものの心にズシンと自分の居場所を残していくその存在感は、史上最強子役のライバルと呼ぶにふさわしい。
彼女があまりにかわいすぎ、魅力的過ぎるおかげで、後半の展開、とくに主人公少年の心の変化に強い説得力を生じさせている。
それにしても、このラストシーンは見ようによってはかなりブラックなオチにも見える。ま、これは下衆の勘ぐりというやつなので、気にせぬよう。
なんにせよ、とてもしっかり作られた良い映画(というより、大切にしたい映画というべきか)なので、大勢の方に見てもらいたいと思う次第である。