『ルイスと未来泥棒』80点(100点満点中)
Meet the Robinsons 2007年12月22日、丸の内ピカデリー2ほか全国公開 2006/アメリカ/102分/配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン

ピクサーパワーを得て蘇ったディズニーアニメ

現在アメリカ映画界の巨人ディズニーは、『トイ・ストーリー』シリーズや『ファインディング・ニモ』の制作で知られる3DCGアニメ界の雄ピクサーを子会社として取り込み、大きく変化している最中だ。そんな中、日本公開される『ルイスと未来泥棒』は、ピクサー社の設立メンバーで代名詞的存在である映画監督ジョン・ラセターを製作総指揮に迎えた、初めての(ピクサーではなく)ディズニーアニメーション作品となる。

孤児院で暮らす発明少年ルイス(声:ダニエル・ハンセン)は、生後まもない自分を捨てた母親のことを知りたくて、古い記憶を覗けるメモリースキャナーなる道具を発明する。ところがこれに目をつけた未来泥棒(声:スティーヴン・J・アンダーソン)が、タイムマシンに乗って現代にやってくる。ルイスは、同じく未来から来た少年ウィルバー(声:ウェズリー・シンガーマン)と出会い、彼と共に未来世界へと追跡を開始する。

ジョン・ラセターの参加が決定した時点で8割完成していたが、そこから6割を作り直したといわれるほどに、彼の影響を強く受けた作品だ。ジョン・ラセターはこれまでピクサーの全作品に関わっており、その高いクォリティを実現させてきたキーマンといって差し支えない。その作風を一言で言えば、キャラクターとシナリオの重視であり、この二つを徹底的に練り上げる事で知られる。

さらに彼は、幼少のころからディズニーアニメを見て育った世代でもあり、ここ最近、ディズニー本体が作る作品のどこに何が足りないのか、誰よりもよく知っている。まさに、最強の助っ人である。

となれば、これは面白くないはずがない。穏やかな色調で描かれるシャボン玉をモチーフにした未来世界(ディズニーランドにあるトゥモローランド区画がモデルで、ちゃんとスペースマウンテンの建物も描いてある)は、CGの良さを存分に生かしてあり、夢いっぱい。

そこでルイスが出会う個性的な一家の人々には血が通った温かみがある。ルイスが彼らから家族の素晴らしさを教わる物語は、とても感動的だ(ルイスの年齢にしては、ちょいと大人びた展開といえなくもないが)。何より、伏線がピタピタとはまっていく終盤の展開が気持ちいい。

『ルイスと未来泥棒』は、映像作品として見せ方が非常に上手く、子供だましのアニメ作品とは一線を画す。ディズニーらしい健全性は、家族連れの観客に安心感を与える。小学生くらいの男の子がいるファミリーにとって、この冬これ以上の選択肢はないだろう。

ちなみに、ウォルトディズニー本人が大好きで、声もあてた短編『ミッキーの造船技師』(38年)が併映となる。古き良き伝統を踏まえたうえで、輝かしい未来へと出航する、これぞ新生ディズニーの、自信にあふれた勝利宣言だ。



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