『サーフズ・アップ』50点(100点満点中)
Surf's Up 2007年12月15日よりスカラ座ほか全国一斉ロードショー 2007年/アメリカ/85分/配給: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ペンギンサーファーのドキュメンタリー風アニメ
『サーフズ・アップ』は、あらゆる点でひねくれたアニメーション映画だ。一風変わったその作風は、子供の観客はむしろオマケで、ちょっぴり大人層に向いている。
イワトビペンギンのコディ(声:小栗旬)は、伝説のサーファー"ビッグZ"に憧れ、氷のボードでサーフィンに明け暮れる日々。17歳になった彼は、故郷南極を離れ、大会で世界チャンピオンを目指すため南国へと向かう。
アニメとはいえ本格的なサーフィンムービー。なのに日本では真冬に公開、登場人物はみなペンギンで明らかに06年の『ハッピー フィート』を意識。しかし中身はコディを取材する形の、奇妙なドキュメンタリー映像風。サーフィンシーンでは葛飾北斎の構図を使い、実在の関係者もキャラクター化。いたるところ、王道から一歩ズレた裏道まっしぐら、といった印象。
それも無理なきことか。激戦区のアメリカアニメ業界には、常に王道を行くディズニーがおり、映像技術の面ではピクサーがいる。変化球やパロディを特色とする『シュレック』のドリームワークスも強く、本作を引っさげた後発のソニーピクチャーズが切り込める余地は、(一見)どこにもない。
結果、彼らに勝てない部分(勝ってる部分はまったく無いが)は中途半端に大人向けの内輪ギャグでごまかすような、思い切りの悪い出来となった。小栗旬の異様にテンションの低い演技もあって、道の真ん中を行けない悲しさばかりが際立っている。
ただ、海と波を本物のように描写した3DCGは、技術的にはもの凄いものがある。プロサーファーの助言を得て描かれたサーフィン場面からは、本物の香りが漂ってくる。動物アニメなのに、スポーツとしてのリアルな魅力を伝えた功績は称えたい。
この技術力に内容が追いついていないため、お手軽かつ使い捨て感が漂っている点が、本作最大の問題であろう。お寒いドキュメントパロディの枠を出ていないので、鑑賞の際はそれらを含め受け入れるつもりでいくべき。
これが2作目となるソニーピクチャーズアニメーションにとっては、なんとか独自色を出そうという、今は模索の段階なのだろう。彼らには早いところ居場所を見つけ、好調の3Dアニメ界をさらに盛り上げてほしい。