『スリザー』75点(100点満点中)
Slither 2007年12月8日(土)、有楽町スバル座ほか全国ロードショー 2006年/アメリカ/95分/提供:ポニーキャニオン、東宝東和 配給:東宝東和

ナメクジを全裸美少女のお口に

ホラーはもっとも様式化されたジャンルの一つであり、精通した監督の手にかかればオリジナリティなどなくとも、相当面白いものができる。『スリザー』はその最高のお手本のひとつだ。

アメリカ南西部の田舎町の山中に、隕石が落下した。現場近くで女性といちゃついていたグラント(マイケル・ルーカー)が見に行ってみたところ、卵のような未確認生物に襲われ、体内に侵入されてしまう。命は取り留めたものの、その日からグラントの体に醜い腫れ物が現れ、成長をはじめる。

これはほんの導入部。このあと大増殖したナメクジ生物が人々を侵食。やがて脳を乗っ取られた人間たちが次々と周りに襲い掛かる。ヌメヌメと気味悪いこの生物、ヒトが悲鳴を上げるとその口から体内に入ってくる。そんな生理的にウギャーな展開がポイントだ。

エイリアン風SFホラー+ゾンビものを中心に、あらゆるホラージャンルのエッセンスが加わり飽きさせない。バスルームで裸の女の子がナメクジに襲われるセクシー要素や、仲間が一人一人死んでいくお約束のサバイバルアクションなど、B級ファンにとっては楽しさてんこ盛り。

意外なヤツがしぶとく生き残ったり、男勝りの強さを誇る女キャラが出てきたりと、どこかで見たような安っぽい素材ばかりだが、料理人の腕がよく、十分満腹になれる。

金髪&黒髪のダブルヒロインも可愛いし、とにかく憎らしいほどツボを抑えた作品だ。それでもたまに「おやっ? なんかそれっておかしくない?」と観客が疑問を持つと、即座に登場人物がわざとらしい説明的セリフで解説してくれる。まさに、痒いところに手が届く親切ホラーといえるだろう。



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