『ベオウルフ 呪われし勇者』60点(100点満点中)
Beowulf 2007年12月1日(土) 丸の内プラゼール他 全国ロードショー! 2007年/アメリカ/1時間54分/配給:ワーナー・ブラザース
フルチンヒーロー大活躍
映画が大ヒットしたこともあって、本格ファンタジーというと『指輪物語』を思い浮かべる人が多いと思うが、その作者J・R・R・トールキンは、現存する最古の英語叙事詩「ベオウルフ」の研究者であり、作品にそのエッセンスを生かしたといわれている。『ベオウルフ 呪われし勇者』は、過去にも何度か映画化されているその英雄叙事詩を、パフォーマンス・キャプチャーの技術を用いて映像化した作品。
パフォーマンス・キャプチャーとは、役者の動きをコンピュータに取り込むモーションキャプチャーを、より精密緻密にしたものと考えればよいだろう。平たく言えば、気持ち悪いくらい実写そっくりなCGアニメ、だ。ロバート・ゼメキス監督は、04年に『ポーラー・エクスプレス』でも、同じ技術を使っている。
デンマーク王(アンソニー・ホプキンス)の宮殿に、宴の騒ぎを嫌った巨大な化物グレンデルが襲い掛かった。甚大な被害を受け途方にくれる王たちの前に、海の向こうから勇者ベオウルフ(レイ・ウィンストン)が仲間とともにやってくる。誇り高いベオウルフは、栄誉のため怪物退治に名乗りを上げ、おとりとして再び宴を開くことを提案する。
ベオウルフの叙事詩にはいくつかの奇妙な謎(つじつまの合わない部分)があるが、この作品の脚本家たちは、さまざまな解釈でそれをクリアしている。そのアイデアの最大のものは、怪物の母親役アンジェリーナ・ジョリーとベオウルフら歴代勇者の、長きに渡るセクシーな関係のループ構造なのだが、これはなかなか面白いと思う。どことなく教訓めいた雰囲気が漂い、結果的に作品の風格があがった。
ちなみにこれ、実写のようだがアニメであるから、沼から素っ裸で現れるアンジェリーナ・ジョリーなどは、えらいナイスバディ。細身に巨乳の、まさにアニメキャラ体型。しかしもっと強烈なのが、主人公ベオウルフだろう。
なにしろこのマッチョマンときたら、怪物の襲撃にあった際、「魔力で生まれた化け物に剣は効かない。肉体のみで勝負するしかないのだ」などと叫び、いきなり服を脱ぎだす異常行動ぶり。剣が効かなくとも鎧やパンツまで脱ぐ必要はないと思うのだが、部下は誰一人それを指摘しない。もちろん追随するヤツもいないので、ベオウルフ隊長ひとり、フルチンで戦うのだ。
そして、針の穴を通すほどのコントロールにより、カメラは絶妙に彼の局部を隠しながら迫力の肉弾戦を描写する。テーブルの上のコップとか、剣の柄とか、そんなものが都合よく股間を隠す構図ばかりで、私はこらえきれずに最後は吹いた。
敵の巨人の頭にオールヌードでくみつくなど、その姿はまさに変態仮面。いや、じつのところ、見ている間はそんなに違和感を感じないのだが、考えてみれば凄い格闘シークエンスである。
後半のドラゴンとの対決も見ごたえたっぷりで、ファンタジー好きなら退屈することはないだろう。パフォーマンスキャプチャー独特の奇妙な質感も、こうした想像上のお話とは相性がいいようですぐに慣れる。
いわゆる、魔法と剣とドラゴンの世界が好きな人、それからマッチョマンの裸を見たい女性の方、もしくは男性の方は、大いに満足できる一品。大人同士で行っても、そこそこ楽しめると思う。