『ROBO☆ROCK』40点(100点満点中)
2007年11月23日(金)祝日、渋谷Q-AXシネマ他にて全国ロードショー 2007年/日本/92分/配給・宣伝:アステア 宣伝協力:プチグラパブリッシング
意欲は感じられるが、予算面での苦しさが丸見えになっているのはいけない
日本には優秀なアニメスタジオが多々あるが、先進的なデジタル作品で定評のあるGONZOは、実写映画にも積極的に進出しようと考えている。『ROBO☆ROCK』はその成果の一つで、巨大ロボが動き回るという、いかにも少年ぽい発想の青春アクションドラマである。
便利屋のマサル(塩谷瞬)のもとに、ニラサワと名乗るオタク風の公務員(中山祐一郎)がたずねてきた。なんでも地球は土星人の侵略の危機にさらされており、それに唯一対抗できるのが、ひそかに作られたとされる巨大ロボ"ランドツェッペリン"なのだそう。そしてその音声起動用周波数にただひとり合致したのがマサルの声なので、協力してほしいという。欲深いマサルの彼女(美波)は、話を聞いて報酬5000万円などと吹っかけるのだが……。
この映画のシナリオを書いた人もしくは監督さんは、いまいち笑いのセンスがないもので、ハイスピードなノリのコメディとしてはつるりとすべってしまっている。たとえばロボットオタク公務員ニラサワは、一人突き抜けた態度で熱く異星人の侵略や巨大ロボの実在を語るのだが、そのハイテンションが計算されたものではないため、単に痛いだけで終わっている。途中でうまくいなしたりすれば、くすっと笑えるものを、ずいぶん不器用な演出だなと思う。
このキャラクターをチャーミングに見せられるかどうかで、作品への好感度も決まってしまうというのに、これではただの頭の変な人だ。
また、主人公の親友にコウ(本多章一)という便利屋がいるが、この男はなぜか危険な裏の仕事ばかりを請け負う。どこから見てもワケありなのだが、主人公ときたらそういう相手の事情などおかまいなしに、彼の邪魔ばかりしている。うざったくて仕方がない。むろん、映画的には親友思いの性格を見せたい故なのだろうが、こういうやり方はない。
とにかくドラマ、コメディ部分はあまりに未熟でまだ完成品の域にすら達していない。
ただ、さすがにCGを駆使したスペクタクルシーンにおいては、そんな煮え切らなさを吹き飛ばす、GONZO作品らしいキレがみてとれる。巨大ロボ登場の瞬間は大迫力で、レトロな変形、攻撃方法など、昔のロボットアニメ風でなかなか楽しい。まさに、低予算ロボット映画版『ALWAYS 三丁目の夕日』である。
とはいえやはり先立つものが乏しかったのか、そうした見せ場はあまりにも量的に少なく、それを目当てに見に行くほどにまではなっていない。
ただ、唯一高く評価したいのは、巨大ロボの活躍を真昼間に堂々と見せた点。ごまかしが効きやすい夜にしようという製作スタッフの意見を、『HINOKIO』に関わったCGIスタッフの誰かが「昼間のほうがいい」と反対した結果らしいが、これはまったくもって後者が正しい。CGロボを昼間の光の下で動かす技術的困難に対しても、よほど自信があったのだろう。まあ、あのヒノキオの凄いCGを作ったスタッフなら、安心して任せられるというものだ。
とはいえ、やはりもうちょっと量がほしい。このクォリティでせめてあと何倍かあれば、と思う。