『ソウ4』55点(100点満点中)
Saw IV 2007年11月17日(土)TOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて公開 2007年アメリカ/1時間33分/宣伝:ファントム・フィルム 配給:アスミック・エース

増築を重ねすぎた異形の建築物のような映画

年々味が落ち、行列こそできるがリピーターは激減中という、どこかの人気ラーメン店のごとき『ソウ』シリーズの最新作。毎年一本のハイペースで続編を作り続け、4作目まで続いたホラーシリーズというのはこれまでに例が無いらしい。まさにホラー界の「男はつらいよ」だ。

2作目からの担当のくせして、シリーズの生みの親のごとき態度があちこちで顰蹙を買っているダーレン・リン・バウズマン監督は、『ソウ』シリーズは一生続けたいなどと語っている。いつかジグソウにお仕置きされると思う。


※注意 作品の性質上、この先1〜3作目までのネタバレを避けることができません。本作に興味がある人は1から3まで順番にご覧になった上で、以下の記事をお読みください。

殺人鬼ジグソウ(トビン・ベル)は死に、司法解剖にかけられる。するとその胃袋から蝋で保護されたカセットテープが現れた。担当のホフマン刑事(コスタス・マンディロア)がそれを再生すると、そこにはジグソウ自身の声で、「私が死んでゲームが終わったと思っているのか。違う、これは始まりだ」とのホフマン宛のメッセージが吹き込まれていた。

いのちのたいせつさを教育するために相手の命を奪うという、本末転倒な殺人鬼のお話。シリーズに共通する魅力はユーモア無しのガチンコ恐怖シーンと、観客全員の度肝を抜く大どんでん返し。ちりばめたいくつかの謎の説明はあえて残し、あとはネットで皆さん論議してね、というマニア参加型のつくりになっている。

この映画の製作関係者はほどほどという言葉を知らず、土地が枯れ果てるまで地下水を汲みあげる気だから、少しでも長くファンの興味をひきつけておくにはこの手法しかないと判断しているようだ。しかし、その過剰なまでのヘビーユーザーへの対抗意識こそが映画の普遍的な面白さをそいでおり、もはや一般の観客はこの作品を楽しむことはできないだろう。

それは、とにかく気持ち悪い映像を見せようという残酷描写にも現れている。行き過ぎたパート3よりは大幅に緩和されたものの(というより見る側がもう慣れた?)、冒頭の解剖の場面などは照明バッチリな中で、人体を三枚おろしにする過程をじっくり見せ大変気持ち悪い。

このシリーズは論理的整合性至上主義で脚本が書かれているから、伏線は憎らしいほどきっちり張ってあるし、犯人の動機や前作と変わったその手口についても、しっかりと理由付けがなされている。ある場面が真相を知った後では、まったく正反対の意味に変貌してしまうなど、ミスディレクションも大胆極まりない。

しかしそれでも高く評価しにくいのは、トリックの面白さとは、決してそういう要素だけで決まるものではないからだ。むろん、上記要素のひとつすらまともに踏むことができない作品が多いことを考えれば、本作のレベルはすこぶる高い。

しかし、時間軸の違いをわざわざ判別しにくく編集する手法などは、なんとしてもマニア連中を騙してやろうという作り手の視野の狭さからくるもので承服しかねる。真に優れた仕掛けとは、まずは誰の目にも一目でわかるシンプルなものでなければならない。その上で、マニアックな人たちが細部まで見直したり深く考えるほど、様々な解釈ができるように、奥行きを持たせてあればなお良い。

パート1にはそれがあり、だからこそコアなファンをつかむことができた。だが、彼らの目をくらますことばかりに腐心する2以降が面白くないのは当然で、もし5を作るのならコンセプトを根本から考え直す必要があるだろう。

3までの内容を巧みに盛り込んだ内容は、増築に増築を重ねた異形の邸宅の全貌を見せていくような趣がある。しかし結局のところ増築部分はしょせん後付けで、何も加えないオリジナルの家が一番良かった。そんな印象を受ける4作目だ。

SAW ソウ DTSエディション
2,3はともかく、この1だけは見る価値があるかと。できればこのDTSエディションで。
デッドコースター/ファイナル・デスティネーション2
ソウの残酷描写好きな方にはこんなのもおすすめ。


連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.