『ディスタービア』80点(100点満点中)
Disturbia 2007年11月10日(土)、スバル座ほか東宝洋画系にて全国ロードショー 2007年/アメリカ/1時間44分/配給:角川映画 角川エンタテインメント共同配給 宣伝:角川エンタテインメント DW劇場宣伝グループ

隣の女の子の着替えを覗いていたら、とんでもないモノが見えてしまった

隣の家に毎日ビキニで泳ぐ美少女が住んでいる。手元には双眼鏡もビデオカメラもある。家族は夜まで帰ってこない。さて、残された10代の少年は何をするでしょうか? そんな興味深い設定の『ディスタービア』は、徹底して若者向けに作られたスリラーで、その明快なコンセプトが全米で大いに受けた。確かにこれ、サイコーに面白い。

教師を殴って3ヶ月の自宅謹慎をくらった主人公ケール(シャイア・ラブーフ)は、自室から30メートル離れると自動的に通報、即警察がやってくる監視システムを足首につけられる。オンラインゲームの契約も母親に切られ、することもなくなった彼は、近所の人々を覗き始める。そしてケールはある晩、裏の家で血まみれのゴミ袋を引きずる男を見つけてしまう。

最初はビキニギャルの同級生ばかり見ていた主人公少年が、やがて殺人事件と思しき何かを見つけてしまう好奇心そそられまくりの展開。やがて悪友と例のビキニギャル(サラ・ローマー)も仲間に引き入れ、iPODやビデオカメラ、パソコン、携帯電話などいまどきの若者らしいアイテムを駆使して事件の解明に挑戦する。

部屋から出られない主人公に代わって、親友や女の子が果敢に尾行や侵入を試みたり、唯一の家族である母親(キャリー=アン・モス)が犯人?に狙われたりと、とにかく息つく暇もない怒涛のサスペンス。足首の電子的足かせや(こんなモン、本当にあるのかね(※))、年齢的な未熟さによる捜査の限界など、絶妙な制限がスリルを生み出す。※パリス・ヒルトンなんかが実際つけられていたそうです

とはいえこの作品のすばらしい所は、深く論理性を追求していないという点。グダグダそんなもんにこだわるより、スピード感の方が大事だろ? という割りきりが潔い。むしろ観客が突っ込めるよう、あえてご都合主義要素を多数残しているきらいさえある。デートムービーとは、鑑賞後にカップルがいかに盛り上がるかが大事なのだから、これは大正解。

見終わった後「でもあんなのありえないよね〜」「そうだよ、だいたい犯人の家、どんだけ増築してんだよ」などと、若い観客たちが細かいアラをバカにしあって楽しむ事すら計算しているこのサービス精神たるや、特筆に価する。これぞ、プロのエンターテナーの仕事である。

そもそも、インドア派の電脳オタク少年に着替えや水着姿を毎日覗かれているのを知って、それでも「アナタって魅力的」などと言ってる学園ナンバーワン美人がどこにいるというのだ。この映画で一番の変態は、間違いなくこのヒロインであろう。

かように笑える要素が多く、ドキドキ感の高さも最高レベル。あとはテンポの良さと多少のお色気。それだけを求めて劇場に行けば、これほど満足を得られる映画はない。デートのお供に最適といえるだろう。



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