『アレックス・ライダー』70点(100点満点中)
Stormbreaker 2007年10月27日(土)より東劇ほか全国一斉ロードショー 2006年/イギリス・アメリカ・ドイツ/上映時間:1時間33分/配給:CKエンタテインメント
大人気原作ものらしく、力の入った出来のティーン向けアクション
この映画の対象年齢は比較的はっきりしている。スパイとして大活躍する主人公は14歳の設定だから、まずはそれより下の世代の男の子、そしてその父親。ところが、そのどちらにも当てはまらない私が見てなかなか面白いのだからあなどれない。世界的なベストセラーの映画化ということで、相当力を入れて作ったことが良くわかる本格的アクションスパイムービーだ。
平凡に暮らしていた少年アレックス(アレックス・ペティファー)は、叔父(ユアン・マクレガー)の死後まもなくイギリス情報局秘密情報部(俗に言うMI6)からスカウトされる。実は叔父は凄腕の諜報員で、スキューバダイビングや射撃、登山など趣味の研鑽を通してアレックスを幼いころから一流のスパイにすべく育てていたのだった。彼は最初の作戦で、MI6がかねてからマークしているIT実業家(ミッキー・ローク)の元へ、PC雑誌のコンテスト優勝者を装って近づく事になった。
知らないうちにスパイとしての能力を、それも超一流のそれを身に着けていたアレックス。子供が活躍するストーリーは数あれど、こういう形で即戦力ぶりに説得力をあたえた点が絶妙。一緒に見に行ったお父さんたちは、次の日から息子にいろいろ習い事をさせたくなるだろう。心躍る導入部である。
主演のアレックス・ペティファーは多数参加のオーディションを勝ち抜いたイケメンで、スポーツ万能らしくアクションシーンの完成度が高い。中でも大勢の悪漢相手に太い綱一本を武器に戦う場面は、おそらく香港のアクションスター、ドニー・イェンが振付けたものと思われるが見ごたえ十分。だいたいこういうイキのいい少年は、全力疾走しているだけで絵になるものだ。
カメラや構図、編集にこだわり丁寧に作った画面は、CGも使うが決して頼り切らず伝統的手法をつきつめたもので、原始的な迫力がある。主演俳優が運転免許を持てない年齢だったため街中でのカーチェイスは馬のそれに代わったが、妥協を感じさせぬ場面ばかり。設定や展開に少年向け作品らしい無邪気さは残るものの、かといって子供たちだけに見せておくにはもったいない。
後半は、ロンドンの有名な観光名所を次々と移動しながら見せ場を作る。ただしこれはこの街をよく知る住民などを、「おやおや、あんな場所であんな事やってら」と感心させるためのもので、普通の日本人がみてもあまり面白くはない。
人気原作を持つ強みで、最後は続編をにおわせる謎めいた形でしめられる。007を生んだお国のスパイ映画らしく、主人公が常に美女にかこまれているなど、基本を抑えているあたりが笑える。
大人も退屈せず見ていられるという意味で、休日に息子と二人で映画館に出かける際の有力な選択肢としてオススメしておきたい。