『バタフライ・エフェクト2』30点(100点満点中)
THE BUTTERFLY EFFECT 2 2007年10月13日(土)より銀座シネパトス他にて全国ロードショー 2006年/アメリカ/93分/配給:アートポート

ひどい劣化コピー

ひとつの傑作を作るためには、作り手に多大な才能が求められる。しかし、傑作の続編を成功させるためにも、これは相当な才気が必要だ。前作ファンの期待に応えねばならないプレッシャーや、失敗して無能扱いされるリスクを考えたら、下手をすればよりキツい仕事というべきかもしれない。

それを成し遂げた数少ない人物として、有名どころでは『エイリアン』や『ターミネーター』のパート2を監督したジェームズ・キャメロン、ややマイナーなところでは、『ファイナル・デスティネーション』の続編の脚本&原案を考えたエリック・ブレス&J・マッキー・グルーバーの二人があげられる。

そして後者の二人が6年間かけて練り上げた脚本を自ら監督したのが『バタフライ・エフェクト』(04年、米)。超映画批評ではほぼ満点をつけた超オススメ品だ。ちなみにサイト開設以来私が96点以上をつけたのは、いま数えたらわずか5本であった。

若きビジネスマン、ニック(エリック・ライヴリー)は、社運を賭けたプロジェクトを任され、いまや絶好調であった。しかし、恋人のジュリー(エリカ・デュランス)の24歳の誕生日を親友らと祝う帰り、人生を変える事故に遭遇する。やがて1年後、ニックの身に過去へ戻る能力が発現、彼はそれを使ってジュリーとの運命を変えようとするのだが……。

ジョン・R・レオネッティ監督は、残念ながら最初に挙げた監督らの系譜に名を連ねることはできなかった。この続編はあらゆる点で劣化した、前作とは比べるべくもない凡作であった。

とくに脚本に工夫がなく、前作が6年かけたというならこちらは6日で書いたのかと思うほど。一から十までまったく同じアイデアと展開で、細部まで手が至らぬ分、質が落ちた。言ってみれば、先生がつくった犬をまねて作った粘土細工が、どうみても牛にしか見えないという、幼稚園児特有の状況に近い。予算規模もかなり縮小されたようで、漂う悲劇ムードや切ない音楽はいいものの、全体として平均レベルに届いていない。

そもそも、前と同じネタで勝てるわけがない。このパート2は同じ登場人物による続編ではなく、"似た能力を持つ別の男の物語"であるから、さらなるひとひねりが必要であった。しかも今回は女を救うためだけでなく、失業回避や出世のためなど、自分の努力でどうにかなるような理由でタイムスリップをする状況を混ぜているから余計にまずい。欲望のまま能力を使うというダメ男の話ならそれでもいいが、結局のところ目指したのは前作の二番煎じである純愛物語だから、単に純度を下げただけに終わっている。

きわめつけはラストシーン。そこまで「こりゃだめだ、もうやめてくれ」と思っていたところ、最後にガツンとくるこの衝撃。あえてここで感想は述べないから、私が何を感じたか知りたい怖いもの知らずな方は上映館にどうぞ。



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