『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』70点(100点満点中)
Fantastic Four: Rise of the Silver Surfer 2007年9月21日、日劇1ほか全国ロードショー 2007年/アメリカ/92分/配給20世紀フォックス映画
ヒーローものとしてのツボを押さえつつ、無理に背伸びせずまとめた
スパイダーマンやX-メンをはじめとするマーベル社のアメコミヒーローの中でも最古参であるファンタスティックフォーは、本国での人気がきわめて高い。
その期待の実写映画であった2年前の前作(『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』)は、しかし日本ではろくに知名度を上げる事も無く終わった。レイザーラモンHGによる、「フォー」に引っ掛けたプロモーションや、エンド曲にオレンジレンジの歌を使ってみたりなど、明らかに方向性を間違った話題づくりが原因のひとつであろう。だいたい、何もしらない人には4作目と思われてしまいかねない題名からしてまずい。
そんな宣伝マン泣かせのシリーズだが、そんなわけでこれがパート2となる。
全米のアイドル的存在になったファンタスティック・フォーのメンバーたち。中でもリーダーのリード(ヨアン・グリフィズ)と紅一点のスーザン(ジェシカ・アルバ)の結婚は、マスコミも注目する大ニュースであった。ところが式の最中、謎の閃光とともにシルバーサーファー(ダグ・ジョーンズ)が現れ、現場は大混乱に巻き込まれる。
宇宙で放射線を浴び、念力や飛行、怪力や伸縮自在などそれぞれがシンプルな超能力を得たファンタスティックフォー。このシリーズは、他の大作アメコミ映画に比べ、小学生からOKの易しいストーリーで映画化されているのが特徴。だから現実の科学と劇中のそれも、無理に整合性を取ろうとはしていない。
そのため、大人の観客(および原作ファン以外の人)はそのあたりはスルーして、抜群に立っているキャラクターの活躍をこそ楽しむといい。とくに4人の、必ずチームワークを重視する戦い方は、熱くなれる要素が満載。各々のシンプルな能力は、組み合わせ方によって多様な危機に対処できる。映画の中でも、ちゃんとヒーローらしく人民を救う場面がたくさん用意されている。やはりヒーロー映画はこうでなくてはいけない。同じマーベルものでもスパイダーマンの最新作にはそれがなく、イマイチ盛り上がらなかった。
中でも結婚式の混乱に対峙する場面と、ロンドンの大観覧車におけるアクションシーンは必見。前作を気に入った方なら、間違いなくアドレナリン分泌量が激増するであろう名場面だ。
今回の敵役シルバーサーファーは、マーベルのキャラクターの中でもトップクラスの人気を誇る。それがなぜかは、彼の人間性が明らかになるこの映画のエピソードを見ればわかる。原作の設定と流れを一部変えているため首をひねるところもあるが、彼の魅力は伝わってくるだろう。
絵的にもインパクトは十分で、彼が銀色のサーフボード(?)に乗って空中を飛び回るアクションは爽快この上ない。このボード、どんな攻撃も跳ね返す猛烈な防御力で、ほとんどグラディウスのバリア状態。米軍との戦闘場面など、派手な見所も多い。対するファンタスティックフォーの面々は、しかし意外なチームワークの発揮法で、胸躍る対決を見せてくれる。
繰り返すが、本作は対象年齢層が低いため、細部にこだわらず、多少のご都合主義はあらかじめ了解した上で見るべき映画。しかし同時に、アメリカでの大人気に応えるべく、手抜きせず作られたアメコミ映画でもある。よって、割り切るべき点を理解して見る人々には、隠れたお得品として記憶されることになるだろう。