『ラッシュアワー3』40点(100点満点中)
RUSH HOUR 3 2007年8月25日、有楽座ほか全国ロードショー 2007/アメリカ/100分/配給:東宝東和

熱演する日本人二人を生かしきれなかった

『ラッシュアワー』はジャッキー・チェンのハリウッド進出後の出世作で、このたびついに3作目が公開となった。それすなわち、最初からある程度のお客の入りが期待できるという意味なわけだが、こうした手堅い企画の場合、ファンサービスに溢れたお得な一本になるか、お手軽なつくりの手抜き品になるか、極端に分かれることが多い。

中国マフィアの黒幕“シャイシェン”の存在を突き止めたと発表したハン大使(ツィー・マ)が凶弾に倒れた。その護衛をしていたリー刑事(ジャッキー・チェン)は、猛追跡で犯人(真田広之)に迫るも、すんでのところで逃げられてしまう。大使の娘(チャン・チンチュー)の命も狙われていることを知ったリーは、乗り気ではないながらも、旧知の相棒カーター(クリス・タッカー)と捜査を開始する。

『ラッシュアワー3』は、残念ながらお手軽品の方だったようだ。むろん、シリーズの特徴である主演二人のハイテンションなやりとりは健在だし、イヴァン・アタルやロマン・ポランスキーといった、意外性あるキャストも通好みで悪くはない。フランスを舞台にした展開も退屈はしない。

しかし、荒唐無稽感を隠そうともしないアクションシーンは安っぽくて見ごたえに欠けるし、クリス・タッカーが突然強くなってザコを一掃する脚本のご都合主義ぶりは、まじめに語る気にもなれない。

いってみれば本作は、火曜サスペンス劇場あたりでやるような『湯けむり○○殺人 熱海に消えた美女』のごとき能天気映画だ。つまり、旅行やグルメ番組の要素に適度なスリルとアクション、お色気を加えた大衆料理。

本作でいえば、フランス旅行記+クリスのマシンガントーク+ジャッキーの本気度50パーセントアクション。そんな内訳だから、ほのぼの気分で見守るくらいがちょうどよい。

多彩なゲスト出演者のうち真田広之と工藤夕貴は、気合の入りようがよく伝わってくる熱演。とくに真田はハリウッドからのオファーのために、日本で長期間拘束される仕事は請けず、スケジュールを空けて待っているといわれるほどだから、ジャッキーとの共演はよほど嬉しかったのだろう。日ごろのトレーニングの成果たる、全盛期と変わらぬハイスピードな動きを見せてくれる。

ただし、この映画の作り手は彼らを生かすやり方をわかっておらず、二人の努力が報われたとは言いがたい。真田とジャッキーの戦いは剣によるものだが、そのせいでジャッキーのクンフーはほとんどゼロ。これはいけない。真田の剣とジャッキーのクンフー、これを戦わせてこそ、両者の持ち味が生きるのではないか。

工藤夕貴も、あれだけ不気味なキャラクターを好演しながらほとんどチョイ役程度にしか扱われておらずもったいない。

日本人キャストがメインということで、本来ならオススメしたいところだが、この出来だと少々つらいものがある、というのが正直なところだ。

ラッシュアワー
パート1。完全に世界がつながっているので、3を見る前にどうぞ。
ラッシュアワー2
こちらがパート2。レッドブロンクスに続き米国で大ヒットしたこのシリーズについては、香港時代からのファンにとっては好みが分かれるところ。


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