『シュレック3』30点(100点満点中)
Shrek the Third 2007年6月30日より全国ロードショー 2007年/アメリカ/93分/配給:アスミック・エース エンタテインメント、角川エンタテインメント

古く、そして平凡

ドリームワークス・アニメーション製作の『シュレック』は、アメリカでもっとも人気があるアニメ映画シリーズとなった。その興行成績たるやケタ外れで、実写のブロックバスターだろうがディズニーアニメだろうが、まったく太刀打ちできない。このパート3にしても、なんと完成前に早くもパート4の発表が行われたほど。

めでたく結ばれた怪物カップル、シュレック(声:マイク・マイヤーズ)とフィオナ姫(声:キャメロン・ディアス)は、フィオナの故郷の王国で国事行為に忙しい日々を送っている。そんなある日、ついにハロルド国王が倒れ、なんとシュレックが後継者に指名される。しかし、沼地での穏やかな暮らしに戻りたいシュレックにとっては、真っ平ごめんな話。彼はしゃべるロバのドンキー(声:エディ・マーフィ)と、長ぐつをはいた猫(声:アントニオ・バンデラス)を連れ、残る唯一の王位継承者であるアーサー探しの旅に出る。

出会いから結婚、そして両親へのご挨拶と、世間一般のカップルと同じ苦労を経て、今回シュレック夫妻はいよいよベビーの誕生を経験する。濱田雅功&藤原紀香の日本語版吹き替えキャストや、ピノキオやらクッキーマンなどチョイ役まで含め、1から続くおなじみのキャラクターたちによる成長話が楽しめる。

シュレックは、米アニメ=ディズニーといった長年の図式を打ち破るため、毒のある笑いや予定調和的御伽噺のパロディ、そして流行歌などをふんだんに取り入れた、"アンチディズニー"としての色を濃くして始まった。その現代的な装いが新鮮で、大いにアメリカ人に受け、ここまできた。

しかし、いまやそのシュレックシリーズ自身が回を重ねるごとにすっかりマンネリと化し、当初の毒も失われ、気がついたらディズニーアニメそのものになってしまった。そしてそうなれば、全世界的に通じる普遍性を持つディズニーの諸作品、物づくりに本作ごときがかなうはずもない。しょせんはアメリカ人向けドメスティックアニメである以上、日本でこれ以上の人気が出ることもないだろう。

じっさいこのパート3はきわめて平凡かつ退屈な出来で、シュレックというだけで喜ぶような一部の人以外にすすめるべき点はほとんどない。

自慢のCGにしても、もうかつてのようにそれだけで凄いと思えるような場面は一切ない。むろん、経年相当の進化はしているが、「フィオナの着るドレスの光の反射がこれまでの何倍も豊かに表現できるようになった」などと言われて、ありがたく感じる客などほとんどいまい。

アメリカのCGアニメ映画はいま、進化の壁にぶちあたっている状況と私は見る。私などは、アニメーションとは省略こそ美学だと思っているが、アメリカ映画界はその真逆を突き進んできた。肌は実写にみえるように、髪の毛はなるべく細く、動きはより滑らかに……そんなことをコンピュータの性能向上とともに追求してきた。

しかしそれもそろそろ打ち止めだ。もう、CGアニメは物語を語るに十分以上の技術水準に達している。実写映画におけるCG使いがだいぶ洗練されてきたように、これからの米国製長編アニメも、技術をどう使えば面白くなるかを追求していくことになるだろう。シュレック3はその流れから完全に外れてしまったが、さらなる続編はどうなるか。まさか同じものを4つも作ることはないだろうと、私はひそかに期待している。



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