『リーピング』70点(100点満点中)
The Reaping 2007年5月19日(土)、サロンパス ルーブル丸の内他全国ロードショー 2006年/アメリカ/100分/配給:ワーナーブラザース
聖書&オカルトものとしては上質な部類
日本はキリスト教の国ではないので、聖書をネタにしたような映画はあまり受けない。クリスチャンなら誰でもわかるような「暗黙の事実」が私たちにはよくわからないし、そもそも興味が無いからだ。ましてそれがただでさえ人気の薄いオカルトジャンルの恐怖映画だとしたら、宣伝マン泣かせもいいところ、だ。
そんなわけで『リーピング』は、『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)の女ボクサー役でアカデミー主演女優賞に輝いたのも記憶に新しいヒラリー・スワンクの主演作でありながら、興行的には苦戦が予想される一本。
かつて聖職者だったキャサリン(ヒラリー・スワンク)は、ある事件を契機に信仰を捨てた。今では、涙を流すキリスト像や病気を治す棺など世界各地の「奇跡」を科学で解き明かしてしまう、無神論者としてその名をとどろかせていた。ところが今回の調査では、旧約聖書の十の災い(出エジプト記)をなぞる超常現象が連続。現代科学という絶対的価値観が揺らぎつつある彼女とそのチームは、村人が災いの元と迫害する森の中の少女(アンナソフィア・ロブ)に会いに行くが……。
この映画、「イナゴ少女、現る。」なんてB級映画くさいコピーがついているが、これを決定するに至るまでの宣伝マンたちの苦悩を考えれば考えるほど、私は申し訳ないが笑いが出てくる。そりゃ確かに大量のイナゴに人々が襲われる場面は本作最大の見せ場だが、アンナソフィア・ロブが演じるのはイナゴ少女でもなんでもない。いや、あんな美少女がイナゴを駆ってアメリカ中を大量虐殺して回る話だったら、むしろウケたかもしれないのだが。
聖書の予言どおり川が血に染まったりなんだりといった展開、サタンがどうしたこうしたいう分析、そして有名ミステリ風のオチ。どれもこれも新鮮味ゼロで、ありがち以外の言葉が出てこない。
……がしかし、オカルト映画にしてはこれ、かなりいい方だ。CGを駆使した不思議現象の数々は単純に見ていて面白いし、ヒラリー・スワンクの存在によってなにやら奥深いテーマを感じるように錯覚するあたりも心地よい。イナゴ少女のビックリするようなかわいらしさも捨てがたい。
結局のところ、本格的なVFX、そして役者という強みを持つ本作は、オカルトムードを気軽に楽しむ分には十分以上のクォリティ。ただ望遠による顔のアップが多く、前方の席で見ると脳を揺らされるので注意が必要。その点さえクリヤーすれば、恐怖映画らしくビックリシーンもほどほどにあり、普通に怖がり楽しむことができる。