『プロジェクトBB』75点(100点満点中)
Rob-B-Hood 2007年4月7日(土)より 六本木シネマート・新宿オデヲンほか全国ロードショー 2006年/香港/126分/配給:UIP映画

泣ける度の高さは過去最高レベル

ジャッキー・チェンは、30年以上にわってすべての主演作が日本公開されている不世出の大スターだが、近年じつは尻に火がつき始めていた。それは、タイのアクションスター、トニー・ジャーの出現による。彼は『マッハ!』や『トムヤムクン』で、全盛期のジャッキーを上回る物凄いリアルスタントを見せ、ジャッキー・チェンに引導を渡すのは間違いなくこの男だろうと、全世界のアクション映画ファンに思わせた。

しかしジャッキーは男であった。新世代のスターの登場を受け彼が手がけたのは『香港国際警察/NEW POLICE STORY』。原点であり古巣の香港映画界に戻り、自身の最高傑作であるポリスストーリーのタイトルを、まったく同じコンセプト(CGに頼らない本物のアクション)で再現した。これはすなわち、トニージャーへ真っ向勝負を挑んだということ。作品の出来もすばらしく、まさに横綱相撲であった。

この成功を受け、再び同じベニー・チャン監督と作り上げたのが『プロジェクトBB』。邦題は『プロジェクトA』を思わせるがまったく無関係なオリジナルストーリーだ。

今回彼が演じるのは、意図せず大富豪の赤ん坊を誘拐してしまう泥棒3人組のひとり。リーダーには、広川太一郎の吹き替えが懐かしい『Mr.Boo!』シリーズでおなじみマイケル・ホイが久々の復活。

彼らはこれまた久々に見るユン・ピョウ刑事におわれつつ、別の凶悪なグループとこの赤ちゃんの争奪戦を繰り広げる。男ばかりで育児にてんやわんやという、お約束的なコメディも大いに含まれる。

しかし本作最大の美点は、そうした笑いでも、いつにも増して過激な出演陣のスタントでもなく、ジャッキー映画屈指のストーリー性の高さだ。

おちこぼれ3人はそれぞれ深刻な家族の問題を抱えているが、いままでずっと逃げ回ってきた。まさに、ろくでなし人間の典型例だ。しかし、ひょんな事から彼らの生活の中にやってきた愛らしい赤ちゃん。この子とのふれあいによって、それらに真っ向から立ち向かう勇気を与えられる。赤ちゃんと別れるあたりから、終盤は怒とうの感動ラッシュで涙なしには見られない。香港映画らしい、荒削りだが熱い情熱にあふれた映画である。これで結末をもう少しスリムにまとめてくれれば完璧だったのだが。

それにしても、この映画に出てくる赤ちゃんのかわいらしい事といったらない。アクションシーンにも全面参加?しており、吹き抜けは落下するわ車に引っ張られるわと大活躍。スペランカーの主人公であれば、100回くらいは死んでいるであろう猛烈な試練の数々を、天使の微笑でこなしていく。あっぱれなまでの耐久力の高さである。

そしてなによりジャッキー・チェン54歳。これをみて、まだまだ全く衰えていないことがよくわかった。これからもこの路線を続けてくれるよう、私はこの映画のヒットを願ってやまない。



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