『大帝の剣』60点(100点満点中)
2007年4月7日より全国東映邦画系にてロードショー 2006年/日本/110分/配給:東映

ゴージャスなオフザケ映画

『大帝の剣』は、CG技術が進んだ今でなくては作れない、逆に言えば今だからこんなにサラリと作れたんだなと思わせる一本だ。原作は夢枕獏の同名小説。奇想天外を突き詰めたようなぶっ飛んだ展開で、作者自身も続きが思いつかなくなったのか、長年未完のまま放置されているシリーズである。

ときは3代将軍家光の時代。古くから、3種の神器を手にしたものは世界を制するといわれてきた。そのひとつであるオリハルコン製の巨大な剣を手に各地を放浪する剣士、万源九郎(よろず げんくろう 阿部寛)は、いまだ幕府に抵抗する豊臣方の姫(長谷川京子)と出会い、そのボディガードがてら行動を共にする。ところが美しきこの姫は、神器を狙う謎の宇宙人に寄生されていたのだった。

時代劇かと思いきや、スタートレックも真っ青の宇宙戦争の場面から映画は始まる。さあさあ皆さん、この映画はジャンルを超えた滅茶苦茶をやるよ、と宣言しているわけだ。

そこから先は時代活劇をベースに、着ぐるみ怪人が出てくるわ、ワイヤーアクションも多用するわとやりたい放題。堤幸彦監督は、得意のけれんみ溢れるカメラワークと絶妙の笑いを全体にちりばめ調理する。じっくり計算してというよりは、即興的かつ勢いで作ったというムードがある。

阿部寛は同監督の「トリック」とほとんど変わらぬ天然キャラ、エロ担当は杉本彩、弱気な宮藤官九郎に熱い竹内力と、各俳優の個性をそのまま振り分けたキャスティング。演じる側はさぞやりやすかったであろう。見ているほうにとっては、意外性はないものの安心感はある。

破天荒な内容を狙ってはいるが、こうした保守的なキャスティングもあり、それほど突き抜けた印象は感じない。むしろ、妙にゴージャスなオフザケ映画という感じ。私はこういう内輪ウケ的な雰囲気の映画はあまり好きではないが、当然その逆の人もいるだろう。

本当なら『大帝の剣』のような映画には、いわゆる前座があるといいのだが。なにしろのっけからこのハイテンションについていくのはなかなかキツい。というわけで、本作はナチュラルハイになりやすい人限定でオススメする。そうでない人には、おそらく30点以下程度の満足度となってしまうと思う。



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