『バッテリー』35点(100点満点中)
2007年3月10日(土)全国東宝系ロードショー 2007/日本/1時間59分/配給:東宝

子ども映画として見ればまあまあ

『バッテリー』の原作小説は、児童向け文学ながら大人の読者の心をもつかみ、全6巻が500万部を超えるベストセラーとなった。となれば人気コンテンツの常で、まずは漫画化、そしていよいよ実写映画化というわけである。

岡山県の小学校に転校してきた原田巧(林遣都)は、大人の打者でも打てぬほどの快速球を投げる天才投手。自分の能力に絶対的な自信を持つ巧は、ある日わずか数球で自分の球をキャッチした同級生の永倉豪(山田健太)と運命的に出会い、バッテリーを組むことに。やがて同じ地元の中学校に入学した二人だが、徹底した管理野球を指導する監督と巧が早速衝突してしまう。

この天才少年は、心を許せる仲間に出会いながらも、あまりに高すぎる自分の能力に周りがついてこれず、孤独を感じ続ける羽目になる。病弱ながらも野球が好きな幼い弟と、それを心配するあまり過保護にする野球嫌いの母の間で難しい立場に立たされながらも、ひたすらマウンドに立ち続ける。やがてライバルが出現し、その対決はクライマックスとして観客を熱くさせる。じつにマジメでベーシックな少年野球ムービーだ。

主人公のバッテリー二人を演じる子役も文句なしの演技を見せる。林遣都はカリスマあふれる巧のムードをよく出しているし、子どもの癖に妙にセクシーでさえある。豪を演じる山田健太も、優しい笑顔を絶やさずに、大きな存在感を放っている。

そんなわけで『バッテリー』は、彼ら二人の大きな力でそれなりに見られる子ども映画になってはいるが、いかんせん大人の観客(読者)を満足させるだけの品質には達していない。泣かせようというあざとさが際立っているし、全体的に文部省ご推薦チックな真面目ムードが強すぎて、見ていて気恥ずかしい。

長い原作をまとめたことによるしわ寄せも随所に感じる。主人公といい仲になる少女が出てきたりするが、物語上、何の存在意義も得られないまま終わってしまうあたりはその典型例。どのみち2時間で原作に忠実に作るのは無理なのだから、思い切って主人公二人に焦点を絞った方が良かった。

また本作は、観客の空気を読めていないという、昔ながらの邦画の悪しき特徴も持ち合わせている。たとえば、最後の試合である人物が応援に来る場面があるが、そこでその人物が行う行動のこっぱずかしさときたらない。一体ぜんたい、どういう効果を狙えばあんなみっともない演出ができるのか。理解に苦しむ。

野球シーンについては、主に打者のフォームにうそ臭さを感じるが、設定は一応中学生(たとえ成人にみえたとしてもだ)ということだから気にすまい。

『バッテリー』は、主人公の少年たちと同じ、主に小中学生で野球をやっている子どもたちなら、それなりに共感でき楽しめるだろう。しかし、それ以外の人にはイマイチすすめにくい。



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