『龍が如く 劇場版』20点(100点満点中)
2007年3月3日、全国ロードショー公開 2007年/日本/110分/配給:東映
原作うんぬんの前に、つくりが雑
『龍が如く』はプレイステーション2の人気ソフトで、今回は2006年のビデオ映画版に引き続き、三池崇史監督により映画化された。
10年の刑期を終え神室町に戻ってきた伝説の極道、桐生一馬(北村一輝)は、町で幼い少女(夏緒)と出会う。そんな彼らを宿敵の真島(岸谷五朗)が狙うが、その一方、二人組の強盗がたてこもる銀行内で奇妙な出来事が発覚する。銀行内にあったはずの東城会の莫大な預金が、すべて消え去っていたのだ。
新宿歌舞伎町の看板を書き換えた架空の町を、ヘリが低空で飛び回る。舞台となる町の風景は一緒でも、いわゆるヤクザ映画とはまったく違う雰囲気のアクション映画だ。
それもそもはず、原作ゲームは任侠ものそれ自体が新鮮で受けたが、映画やVシネマにおいては大昔からやりつくされたジャンル。映画化したらただの平凡なヤクザ映画でしたでは、わざわざ作る理由がない。そこで三池監督は、本作をお得意のゆるゆるなコメディをベースに、北村一輝の切れのいいアクションで味付けすることにした。
ゲーム『龍が如く』の大きな魅力はそのストーリー性にあったが、監督はそれも捨てた。ストーリーを重視した任侠ものにすれば、それはおのずとどこかで見たようなものになるから、というのもあるいは理由のひとつかもしれないが、それよりはむしろ、ゲームファンをうならせるだけの物語を、与えられた制作期間で作る自信がなかった事が大きいのではないかと推測する。
そうした判断力、器用さがあるからこそ、この監督は多作なのだと私は思っているが、しかしそれではゲームのストーリーの面白さを映画に期待する多くの観客はガッカリだ。じっさい、『龍が如く 劇場版』からは、やっつけ仕事のような雑な印象を強く受ける。つくりがしっかりした映画は、原作を知らない者にもアピールする力があるものだが、本作にそれは期待できない。おそらくゲームをやったことの無い人がこの映画を見ることはまず無いと思うが、もし検討しているなら相当な覚悟を持って出かけたほうがいい。
正直なところ、映画としてはどうにもならない出来栄えで、私としてはすすめられない。あえてこれを見て多少なりとも満足できる人がいるとすれば、ゲームをプレイしてあらかじめストーリーを細部まで知っており、かつキャラクターの奇抜さや脱力系のギャグを受け入れられる人。そんな人が、物語性ではなくちょっとしたアクションや北村一輝&岸谷五朗の怪演に期待して行く、とするならば、話はまた違ってくるだろう。