『オープン・シーズン』55点(100点満点中)
「Open Season」2006/アメリカ/カラー/86分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 2006年12月9日(土)より全国東宝洋画系にて公開

低年齢向きでごくごく普通、フェアウェイど真ん中を刻むゴルフのような映画

米国のアニメーション映画のほとんどは、見ての通りファミリー向けの無難な作品が多い。マーケティングをしっかり行えば比較的商売的に手堅く、家族みんなで見にくるから興行収入も期待でき、上映時間も短いから一日の回転数も多い。さらに、見に来られない人もDVDを買ってくれるというわけで、作り手側からすれば、どこから食べても美味しいジャンルだ。

となれば、大手のソニー・ピクチャーズがこの分野に参入するのも当然の成り行き。『オープン・シーズン』は、彼らがその第一弾として送り出した長編アニメーション映画だ。日本市場も重視しているようで、嘘かマコトかハリウッド本社自ら、吹き替え声優を指名したそうだ。

文明社会にすっかり慣れ親しんでいる熊のブーグ(声:石塚英彦)は、環境と動物たちを愛する女性森林警備隊のベス(声:木村佳乃)に飼われ、優雅に都市生活をエンジョイ中。ところが、あるとき知り合ったお調子モノの野生鹿エリオット(声:八嶋智人)と町で大暴れしたせいで、森に追放されてしまう。オープンシーズン(=狩猟解禁日のこと)が迫り、恐ろしいハンターが森にやってくる中、野生での生き方を何一つ知らないブーグは早速危機にさらされる。

親的存在の人間から離れ、野生の世界で試行錯誤しながら、それでも仲間を見つけ、助け合ってなんとかやっていく熊の物語。もちろん、熊ではあるが、人間の子供がたどる成長の道そのものを象徴しているのは言うまでも無い。擬人化された動物たちのお芝居を楽しく見れば、それがそのまま子供らに対する教育にもなるという優等生的なつくりだ。

動物たちの中には、イジメをする嫌なやつもいれば、比較的友好的なヤツもいる。あるいは最初に親友となる鹿のエリオットのように、一本頭のネジが抜けた間抜けなのも。コイツがマシンガントークでいらん事ばかりしゃべる姿はなんだか憎めなくって、やっぱり人間関係にはこういう存在も必要だよなあと思えてくる。

ちなみに私が見たのは英語版で、この鹿の役は『バタフライ・エフェクト』でシリアスな演技を見せたアシュトン・カッチャーがやっている。観客にわかるくらい楽しげに演じているのが印象的だった。ちなみに彼は、もうすぐ公開になる海洋アクション『守護神』でもシリアスな役をやっていて、試写の日程の都合で直後にコレを見た私は、なんだかフクザツな気分になった。あのステキな彼がこのマヌケな鹿か……。

コメディタッチだが、多少なりとも毒があったり、大人が爆笑できる場面は数えるほど。しかし子供たちにとっては、とても楽しい映画に違いない。夜、無人のお菓子屋さんに忍び込んで、店の商品を食べ散らかすシーンなどは、思い切りカラフルな演出で、見るからに子供たちが喜びそう。シチュエーションも、いかにも小さい子たちが喜びそうなワクワクするものだ。

年齢層としては、小学生の低学年くらいか。作品としての出来はすこぶる平凡だが、親御さんにとっては、まあ86分間付き合って鑑賞してやってもいいかな、程度の品質は保たれている。



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