『ソウ3』40点(100点満点中)

シリーズの中でもっとも完成度が低い

このシリーズの第1作『SAW』は本当に素晴らしい映画だった。ほとんどの展開が一部屋のセット内で繰り広げられるのに抜群に面白く、奥が深く、そして怖い。伏線は大胆に張り巡らされ、最後には驚天動地の結末が待っている。ミステリファンもスプラッタ系ホラーファンも、大いに満足できる一品だった。

あれから2年、商売上の理由か駆け足で続編が作られ、早くも3作目だ。どんでん返しが最大の魅力というシリーズの性質上、犯人も手口も完全に知れ渡った今、パワーダウンは免れないが、果たしてどこまで踏みとどまれるか。

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ここから先、ストーリーの紹介のため、Part1と2のネタバレは免れません。前2作を見ていない方で本作に興味がある方は、『SAW』『ソウ2』を観てから読むことをすすめます

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優秀な女性外科医リン(バハー・スーメク)は、かつて関わった患者ジョン(トビン・ベル)の元へと拉致される。瀕死だが、恐るべき殺人鬼でもある彼の命を、あるゲームが終わるまでなんとしても維持しろというのだ。

そのゲームとは、もちろんおなじみの殺人ルールによるもの。命のたいせつさを、命と引き換えに教えてくれる世界一おせっかいな殺人鬼による、拷問ゲームだ。今回もまた、助かるためには脚を自分で切れとか、無茶な課題が連発する。残酷描写はシリーズ最高で、まるで拷問のギフトカタログを眺めているよう。ギャグは一切ないガチンコ恐怖映画で、とにかく観客に痛さ、気持ち悪さを与えるという点で群を抜いている。

特に驚かされるのが、こうした場面でこの映画、何もかも全部見せてしまうという点だ。たとえば他のあらゆるホラームービーでは、ノコギリの刃が人体にささる瞬間とか、頭が破裂する瞬間とか、あるいはお化けが出てくる瞬間そのものはあえて写さず、観客の想像力によって恐怖を増幅させるという手法をとる。最近ではCGの進歩により、その原則をあえてはずす作品(交通事故の瞬間をわざと見せるショック演出とか)も少なくはないが、『ソウ3』ほど徹底して"すべて見せる"映画はない。

この映画は、「見せないことによる怖さ」を全否定している。あなたが期待するならば、尻の穴まで全部みせましょうと言わんばかりの徹底ぶりには、呆れながらも感心する。

とはいえ、このパート3の残酷描写は、それ自体が真相の目くらましとなっていた一作目などに比べると底が浅く、単に気持ち悪いだけであり、あまり高い評価を与えられるものではない。ミスディレクションの誘導先が定まらないためストーリーに爽快感が薄く、鑑賞後の後味が非常に悪いのも大きなマイナスだ。

また、前作に関する謎について、ネット上などで盛り上がっている解釈議論に影響を受けてしまったのか、この3作目で解答らしきものを提示しているのもどうかと思う。一作目の完成度は十分に高いのだから、何もいまさら作り手が細部にいちいち言及せずとも良いのだ。この、「作り手が観客の反応を過剰に意識しすぎ」という点は、一種の迷いとして後半の展開に痛いほど鮮明に現れてくる。

『ソウ3』は、相変わらずスピーディーな展開が抜群に面白く、退屈とは無縁の作品だが、1、2と観てきた人々の大きな期待を背負うには少々力不足。とにかく残酷で、不愉快な気分になれる映画だから、そういう特殊な部分のみに期待して行くには最高だが、前作までの完成度を期待するとこの点数くらいになってしまう。くれぐれもご用心を。



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