超映画批評『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』70点(100点満点中)
比較的まっとうだったラストムービー
『木更津キャッツアイ』は、今をときめく脚本家、宮藤官九郎の代表作であり、カルト的人気を誇るテレビドラマシリーズだ。放映当時は決して高視聴率ではなかったが終了後、あれよあれよという間にその評判が広がり、映画版も2本作られることになった。この『ワールドシリーズ』は、いよいよそのシリーズの最後、完結編となる。
余命わずかと宣告されながらも、しぶとく生きつづけたぶっさん(岡田准一)がついに死に、3年の月日が流れた。あれほど強い結束を誇った残りのメンバーも、すでにバラバラになっていた。そんな中、ただ一人木更津に残ったバンビ(櫻井翔)は、あるとき謎めいた天の声を聞く。さんざん的外れな行動を経た後、その声が「野球場を作れば彼は戻ってくる」との意味だと気づいたバンビは、早速メンバーを集めて実行に移すが……。
ゲスト出演者ではなく、すでに死んでいるオジーを含めた、キャッツの中核的メンバーによる大団円だ。クドカンによる脚本は、このシリーズの伝統である時間まき戻しの効果を取り入れながら、回想その他さまざまな形でぶっさんやオジーを登場させる。しかし、そうした演出技巧にはけっして必要以上に頼らず、前作に比べてストレートな人間ドラマとして仕上げた。各キャラクターは相変わらずのバカをやっているが、最後にはホロリとさせる、そんな内容だ。
物語は、先ほど書いたあらすじにあるとおり、傑作野球映画『フィールド・オブ・ドリームス』をパロディにしている。とはいえ、ストーリー自体にはそれほどとっぴな仕掛けはなされていない。節操ないように見えるが、うまく取り込んでおり、けっしてマイナスではない。
宮藤官九郎の脚本は、どの作品もまるで小劇団の演劇をみているようで、今の段階ではまだ映画には適したものではないと私は思っているが、今回もその思いは覆されなかった。ただし、今回はギャグのツボを比較的はずしていないし、前作よりずっと面白く感じられた。
この映画は、想定した客層がハッキリしている分、好みも分かれる作品だ。テレビシリーズを未見の方はもちろん、クドカンが苦手な人も、この映画を観る理由はない。逆に、木更津キャッツアイを大好きな人は、何であろうと観ずにはいられぬだろう。ちなみに70点とは、上記の条件に合った人向けの点数だ。