『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』60点(100点満点中)

気軽にみられる政治サスペンス

合衆国秘密警察局、シークレット・サービスとは、大統領やその家族など、要人警護を主任務とする警察機関。映画でも何度も登場しているが、この『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』も、そこを舞台にした政治アクションドラマ。中規模の予算による、娯楽性の高い作品だ。

レーガン大統領を暗殺から救ったベテランシークレットサービス(マイケル・ダグラス)に、大統領暗殺計画の容疑がかかる。その捜査を行うのは、彼と長年の確執を抱えた凄腕の同僚(キーファー・サザーランド)。壮絶な追跡劇の中、主人公は自身の濡れ衣を晴らすため、独自に真犯人を探し始める。

『ザ・センチネル』は気軽な娯楽映画で、適度なリアリティをもつアクションを、バランスよく配合してある。そのほかにも、恋愛あり、政治シミュレーション的な面白さありと、色々詰め込んである。

主人公を追うキーファー・サザーランドは、最近ではTVシリーズ『24 TWENTY FOUR』の主人公、ジャック・バウアー役で知られる俳優だが、この映画ではあまり存在感を示すことは出来ていない。

むしろ特筆すべきはマイケル・ダグラスの方。ちなみに彼はこの映画でも、"くそまじめな顔をしているが、よく見りゃただのエロオヤジ"という、『氷の微笑』や『危険な情事』から続く、いつも通りのキャラクターを演じている。

だいたい、シークレットサービスのくせに警護対象の大統領夫人と不倫をし、同僚(キーファー・サザーランド)の恋人を寝とるという、主人公とは思えぬ非道なエロ人間を、説得力をもって演じられる俳優などそうはいまい。しかも映画内で、そのことを罰せられることはとうとうない。それでも許される男が、マイケル・ダグラスだ。

シークレットサービスが舞台だから、男たちのプロっぽいしぐさ、たとえば、階段の死角をうまく利用した銃撃戦や、意外な方法で犯人にせまる捜査方法などを堪能する楽しみもある。こうしたプロ職業の実態を覗けるというのも、この手の映画の大きな魅力だ。

個人的な意見では、マイケル・ダグラスの役柄はどう見てもギャグだが、決してそれを映画を見ている間、観客に感じさせることはない。繰り返しになるが、お気楽娯楽とリアリティのバランスが優れた作品といえる。



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