『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』55点(100点満点中)
アイドル映画としてはイマイチ、アクション映画としてはそこそこ
『スケバン刑事』とは、和田慎二の人気漫画であるが、30代以上のオジサンたちにとっては、かつての 80's 人気アイドルたちが出演していたアクションテレビドラマとしての記憶が強いだろう。本作は、原作者のご指名を受けた当代随一のアイドル、松浦亜弥主演で作られた、映画版としては3つめの作品となる。
爆弾事件に関わっている疑いの濃いアングラサイトを捜査中の、学生刑事が爆死した。その後、そのコードネーム"麻宮サキ"を受け継いだのは、ニューヨークで警察でも手がつけられぬほど暴れまくり、強制送還された筋金入りのスケバン(松浦亜弥)だった。米国で拘束されている母親を、国際司法取引で救うのと引き換えにスケバン刑事となった彼女は、持ち前の行動力と格闘術で、学園内での潜入捜査を進めていく。
『スケバン刑事』は、DVDも売れ、アニメ化もされている、2006年現在でもなかなかの人気コンテンツ。アイドルマニア的には、その時代のトップアイドルが、見た目やムードとは正反対の乱暴な言葉やふるまいをする、そのギャップを楽しむというシリーズだ。
この最新作でも、ルックス抜群、声も可愛いトップアイドルあややによる、ツンデレのデレ抜きが存分に楽しめる。男言葉のあややは、とてつもなく可愛い。今風にミニスカートではあるが、セーラー服に赤いスカーフ、鉄のヨーヨーというかつてのスタイルは同じだ。初代麻宮サキ役の斉藤由貴や、暗闇警視役の長門裕之など、ファンには懐かしい顔も見られる。
松浦亜弥は、映画だからと肩肘張らず、しかし最低限の役作りをこなすという、アイドルとしては十分以上の演技を見せる。走るシーンがたくさんあるが、もっとも女の子っぽさが見えてしまいがちなこれらの動きを、うまく隠したあややと監督はうまかった。
その監督は、名匠深作欣二の息子であり、『バトル・ロワイアルII』の深作健太。彼はどうも、女の子をかわいらしく撮るという点についてはイマイチだが、さすがに父譲りのセンスか、アクションについてはなかなかやる。
この映画も、アイドル映画としてはちょっと……だが、アクション映画としてはまあまあといったところ。松浦亜弥が後半に身に付ける、体にぴったりしたラバースーツなどは、せっかくプロポーションが良い事で有名なあややが着ているのだから、もっと彼女の下半身に迫ってほしかったところ。しかし深作監督はあくまで硬派に、まるで男のアクションスターを撮るようにカメラを回す。
格闘場面は、アイドルが動いているわりには良くできている。売り物であるヨーヨーさばきも、現代ではCGが使えるので見栄えがする。ただし深作カントク、有名な海外作品の映像表現を臆面もなくコピーするのはいかがなものか。
アクションについてもう一ついうと、意外にも石川梨華がとてもよかった。聞くところによると、アクション映画に出られると聞いて、大変意欲的に練習をしたという。ヨーヨーを振り回す姿は、主役の松浦亜弥よりずっとさまになっている。スクリーンからは、一番やる気を感じられる。
そんなわけでこの映画は、出演している女の子、とくに松浦亜弥のファンがみればそこそこ楽しめる程度の出来にはなっている。ただし、そうでない普通の人々や、かつてのテレビドラマ版のファンがすすんで見るほどかというと、微妙なところだ。