『紅蜘蛛女』40点(100点満点中)

濡れ場の変化がある種の演出効果をあげる

『紅蜘蛛女』は、一言で言えば坂上香織のハダカを見るための映画である。さらに言うと本作は、彼女初の海外映画進出作品(香港映画)となっている。思えばかつてアイドルだった坂上香織は、93年に雑誌で突然ヌードグラビアを発表、世間にそれなりの衝撃を与えると同時に、女優への転進を決めた。その流れから見ればこの映画、文字通り裸で進路を切り開いてきた彼女らしい、海外への第一歩といえるだろう。

舞台は現代の香港。軽薄な中国人カメラマンのケニー(トニー・ホー)は、物憂げで美しい日本人女性、由美(坂上香織)に目をつけ、首尾よく一夜を共にする。ただの遊びと思っていたケニーだが、彼女は違った。ケニーが本命と仲良くしているのを目撃した由美は猛烈に嫉妬。ケニーを監禁すると、足の指を切り落とし、セックスを強要する日々が続いた。

危険な情事とミザリーを合わせたような、サスペンスタッチのエロティックドラマだ。香港を舞台にしてはいるが、非日常的な空間を感じさせる、ファンタジックなムード。血のりはチープだが、それでもそうした映像が与える恐怖はそこそこにある。ヒロインのもつ表面上の異常性、その裏側の寂しさを、坂上がなかなか上手に演じきっている。

坂上は、台詞こそ吹き替えだが、濡れ場の数々は当然自ら体当たりの演技。直接局部を映さないだけで、やっていることはAVなみに過激だ。中でも最大の見所は2度目のHシーン、女性上位の体位を俯瞰の構図で映す場面。ここで坂上はその身体のすべてをあらわにし、結合部の動きをバッチリと見せる。彼女の長所を余すところなく出し切った名場面とでも言うべきか。

なお、段階的に変化する濡れ場は、それ自体がある種の演出意図をもって撮影されている。具体的には、坂上の頭部を常に男より上に位置させる体位を多用することで、二人の上下関係の比喩としている。それが最終段階、どのように変化するのか。そこで坂上香織は、最高に可愛らしい、そして感動的な演技を見せる。

決して傑作と呼ばれることはないだろうが、近年のエロ系映画作品の中では、そこそこ心に残る作品。彼女のファンには、おすすめしておきたい。



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