『シュガー&スパイス 風味絶佳』30点(100点満点中)
中高生向きの希少なデートムービー
柳楽優弥といえば、「誰も知らない」でカンヌ映画祭の最優秀主演男優賞を史上最年少で受賞、一躍スターとなった映画俳優。いまや高校生となった彼の最新作は、キスシーンもあるラブストーリー。山田詠美の短編小説『風味絶佳』の映画化だ。
東京、福生市に暮らす高校生(柳楽優弥)は、将来の進路に迷っていた。結局、両親の反対を押し切り大学進学をせず、とりあえずガソリンスタンドで働くことにした彼は、そこのバイトの少女(沢尻エリカ)に恋をする。
『シュガー&スパイス 風味絶佳』の点数は30点で、こういう点数をつけると誤解を招きやすいのだが、別にこれは駄作というわけではない。この映画を、対象年齢である中高生がみれば、それなりに満足して帰ることはできるかもしれない。中学生同士のデートムービーとしての恋愛ものというのは案外少ないから、それなりに貴重な存在ではあろう。
ただ、これを無理やりオトナの目で評するなら、あらゆる面で稚拙さが目に付く。たとえば、このお話は、いかにも平凡なルックスの二人が、いかにもありがちな恋をするというただそれだけのもの。
こうした流れの場合、いかに主演二人に観客が感情移入できるかがポイントとなるが、この二人は表情に覇気がなく、無表情、無感情に見えいただけない。一言でいえば、目に力がないという感じ。演技もいまいちで、なかなか乗れない。
主演の柳楽優弥は、精彩を欠いているものの、15歳当時に18歳の役を演じているという点(この年代で3歳の年齢差は大きい)、年上の沢尻を相手に絡んでいる点を考えれば、まあ許せる。
むしろ相手役の沢尻エリカ、これは今大人気の、旬真っ盛りの女優さんだが、これがいけない。メディアはこの人と長澤まさみ(『ラフ』など)をライバルなどと呼ぶが、演技力うんぬん以前に、この二人は風格が違いすぎる。長澤には、まずい料理(駄作)でもなんとか食わせるだけの、周りに浸透していくような強烈な魅力があるが、沢尻からはそうしたオーラは感じられない。
『シュガー&スパイス 風味絶佳』は、ラブストーリーとしての重要要素、ヒロインの魅力不足ということが言えるであろう。(などとインターネット上で書くと、またぞろぞろと苦情のメールがくるに違いないわけで頭が痛い。なぜ長澤を誉めるとこんなに叱られるのやら……)
ガソリンスタンドのセットは、『バグダット・カフェ』をイメージして作られた。二人の保護者かつ友人的役回りの夏木マリ(老けメイク)も、役柄上経営するバーの内装美術に大いに意見を出したそうだ。彼女の役回りは、少々非現実的なものだが、福生という土地は米軍基地の町であり、基地の近くに住んでいない私のようなものにとっては、それだけで不思議な空間。そのためか、違和感はまったく感じない。
そんなわけで『シュガー&スパイス 風味絶佳』は、中学生から10代までの、ごく限られた少年少女たちのデートムービーとして、多少は機能するかどうか、といったところだ。ちょっと一味変わった、おしゃれっぽい雰囲気の映画だし、ラブシーンもあるから、使い方によってはドキドキを味あわせてくれるかもしれない。